八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「あっ、ごめん! つい」

 慌てて手をどける穂村さんを、まっすぐ見つめる。

 気まずそうに避けられていたけど、今日は来てくれた。このチャンスを逃したら、絶対に後悔する。

 謝ろうとしたとたん、お尻の方で、なにかガサガサと音がするのに気づいた。

 カバンの中をあさっていたスカイが、水色の封筒をくわえてピョンと逃げ出した。

「え? ま、待って! スカイ、返して!」

 よろけながら、テーブルと椅子の間をすり抜けて、キッチンの方へ向かう。簡単にかわされて、庭へと出て行ってしまった。

 どうしたのかと、みんながウッドデッキの方へ集まってくる。

 お願いだから、やめて。とりあえず用意したものだから、まだ心の準備はできていないの。

「ス、スカーーイ!」

 捕まえようと必死になりすぎて、前が見えていなかった。
 ウッドデッキの段を踏み外して、転がりそうになる。

「わ、わわわあーーっ!」

 体を起そうとするけど、踏ん張れない。
 そのとき、グッと腕を引かれて、うしろへ倒れこんだ。

 下じきになっている藍くんが、「いってー」と口をゆがませている。

 わたしのことを、とっさに助けてくれたみたい。

「ご、ごめん! ありがとう」

 倒れたときにできたのか、ひじが少しすりむいている。

「ケガしてる! 消毒しないと」

「こ、こんくらい平気。それより、気をつけろよな」

 パッとそっぽを向かれたけど、その横顔がほんのりと赤くなっていた。

 嫌われてもいるわけでは……ないのかな?

 みんながかけよってきて、椿くんが手をかしてくれる。

 立ち上がったら、スカイを抱っこした琥珀さんが封筒を取り返して、わたしへ渡した。
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