八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 庭先に集まって、みんなが注目している。
 話すなら、今がチャンスかもしれない。

 一度息を吸って、ゆっくりと吐き出す。

「……ごめんなさい。ずっと謝りたくて。でも、なかなか勇気がでなくて」

 封筒の中から、一枚ずつ手紙を出した。穂村さん、藍くん、安斎さんと順番に渡していって、最後に椿くんの手へのせる。

 嫌われても仕方ないことした。穂村さんの気持ちを踏みにじって、傷つけた。藍くんにも、イヤな思いをさせた。

 でも、全部が嘘じゃない。みんなと仲良くなりたいと思っていたのは、嘘じゃない。

 黙って手紙を読んでいた穂村さんが、ボロボロと涙を流して。

「ち、違うの。ミヤこそ、言わなきゃって思ってた。最初はびっくりしたし、なんでってショックだったけど……」

 ずびっと鼻をすすりながら、一生懸命話そうとしている。

「ミヤの中での三葉くんは、三葉くんのまま変わってないから。性別が違っても関係ないって、気づいた」

 最後は、まっすぐ目を見て笑顔を見せてくれた。

「ありがとう。嫌われたと思ってたから、嬉しい」

 わたしまで、涙腺がゆるんでくる。

「これからは、碧って、呼んでいい?」

「もちろん!」

 キラキラと涙をぬぐっていたら、トンと押された藍くんが、わたしの目の前に出た。

「さあ、次は藍の番だよ。意地張ってないで、素直になって」

 琥珀さんの言葉に、うるさいなと言いながら、藍くんがチラッとこっちを見る。

 手紙を握りしめた手が、少しだけ震えていた。

「黙ってたことに対して、イラついてた。男と思ってたから、話したことだってあるし。オ、オレは、べつに、アオイのことが好きなわけじゃない」
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