八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「……うん」

 チクリと胸にトゲが刺さる。
 藍くんの優しさで、やんわりにごしてくれたのかな。騙してたんだから、仕方ない。

「で、でも、嫌いでもない」

 え? ハテナと首をかしげて、藍くんを見る。

「どっちかと言えば、好きに近い嫌いで……あれ、嫌いに近い好き? なんか、よくわかんなくなってきた」

 くしゃくしゃと頭をさわって、混乱しているみたい。

 その姿が小さな子どもみたいに思えて、可愛らしくて、自然と頬がゆるんだ。

「あはは、なにそれ」

「わ、笑うな! とにかく、まあまあ好きってことだよ」

 ぶっきらぼうな口調だけど、藍くんなりの仲直りだと伝わった。

「ありがとう。わたしも、藍くんのこと好きだよ」

「バッーーカじゃねぇの。なに言ってんだ。オレは、まあまあって言ったんだよ! 勘違いするな!」

 大げさなほどのテンパりように、安斎さんと矢野さんがすかさずカメラをかまえる。
 ランアオのレアショットだと言いながら、逃げる藍くんを追いかけて。

 微笑ましい光景を見守りながら、ふにゃふにゃと笑っていると、椿くんに手を引かれて庭へ降りた。

「こっち」

 連れられるまま、みんなから離れて、植木の陰まで歩いていく。

 シーッと人差し指を立てる椿くんに、ドキドキと音がなり始める。
< 155 / 160 >

この作品をシェア

pagetop