八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「やっと二人きりになれた。あっち、騒がしくて頭が痛くなりそう」

「みんなにぎやかだもんね」

 肩上の髪を耳にかけて、意識しないようにと目線を下げた。

 ふさふさの木は、ちょうどわたしたちを隠すくらいの大きさ。

「ちゃんと伝わってよかったな」

 心配してくれていたんだ。
 嬉しくて、にやけそうになる顔をキュッと引きしめる。

「椿くんがチャンスを作ってくれたおかげだよ。ありがとね」

 照れ隠しにヘヘッと笑う。

 すると、いきなり抱きしめられて、動けなくなった。

「えっ、ちょっと⁉︎ みんな、すぐそこにいるのに……」

 だんだんと声が小さくなっていく。
 見つからないように。だけど、もう少しこのままでいてほしい。

 わたしの心は、いつも矛盾(むじゅん)だらけ。

「もっと一緒にいたい……って、思ったらダメ?」

 甘いささやきに、くらくらする。

「わたしも、同じ。でも、明日にはお父さんたちが迎えに来る。それに、もしかしたら、また男子になっちゃうかも」

 今は落ち着いているけど、この先はわからない。
 精神的なものが原因だと養護の先生は言っていたけど、治し方もあいまい。

 そっと体を離すと、くもりないキレイな瞳が飛び込んできた。

「俺が好きになったのは、三葉碧だから」
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