八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 ドアが開いて、スエット姿の椿くんが入って来た。風呂上がりなのか、シャンプーのいい匂いがする。

「……気付いたか」

 隣に腰を下ろすと、さらっと髪を押し上げて、わたしのおでこに手を当てた。

 ひっ、と体を縮めながら、触れられたところに意識がいく。

「熱はなさそう」

 指が離れてからも、心臓の音は大きくなったまま。鎮めようとしても、なかなか(おさま)らない。

 クッションを抱えながら、小さく息を吐く。

「あの、僕……なにか、やらかした?」

 おそるおそる聞いてみる。

 少しの間があって、目を見つめたまま椿くんがぽつりと。

「風呂場で倒れたの、覚えてない?」

 やっぱり、そうだったのねーー。

 なんとなくのぼせた感じはしていたから、誰かが運んでくれたのだろうと予想はしていたけど。

 この空気だと、もしかして、椿くんが?

 今、ちゃんとパジャマだと言うことは、ぜんぶ見られた⁉︎
 うそ、でも男の姿だったよね?
 ……だめだ、全然思い出せない。

「そもそも、なんで(はく)と風呂?」

「あっ、それは、たまたまなりゆきで。たぶん、琥珀さんは打ち解けるきっかけを……」

「……バカなの?」
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