八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 ぐいぐい迫って来る剣幕な顔から、視線を外したとき。

「三葉くーん、急にごめんね? あんなこと頼んじゃって」

 誰か知らないもう一人の声が、奥の準備室から飛び出してきた。
 耳の下で、二つのお団子結びをした大人しそうな子。

「えっ?」

「すっごくよかったです。また、なにとぞお願いしまーす」

 別の女の子も出てきて、顔の前で手のひらを擦り合わせる仕草をしている。
 メガネ姿に黒髪ボブを揺らして、話を合わせろと目で合図された。

「あっ、ああ……? うん、は……い」

 ワケが分からないまま、とりあえずうなずいてみたけど、だれ⁉︎

「げっ、安斎(あんざい)矢野(やの)じゃん。なんでここにいんの。面倒くさいから、行こっ」

 さっきまで、ものすごい形相で迫っていた女子たちが、尻尾を巻くようにして去って行った。

 救ってくれたことには感謝だけど、一体何者なんだろう。
 カースト一軍の彼女たちを追い払う力の持ち主なんて。
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