八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「そんな邪心聞いちゃったら、悪いけど、うんとは言えない」

 ここは、ちゃんとしなければ。
 眉をキリッと上げて、はっきりと。

「あっ、勘違いしないで。うちらは被写体として狙ってるだけで、それ以上でも以下でもないので」

「そうそう。八城兄弟は神の領域ですから。生身に触れたいというより、見て()でたい存在です」

「三葉くんの秘密、暴露(ばくろ)されたくなかろ〜?」

 その時、授業開始五分前の予鈴がなった。
 つらつらと言いたいことだけ言い終えると、

「じゃっ、そういうことで。ご検討よろしくです〜」

 二人は忍者のごとく、素早い身のこなしで美術室を立ち去っていった。

 わたしの……ヒミツ? あの二人は、何を知ってるの⁉︎

 最後に落とされた爆弾で、一日中もんもんとして過ごすこととなった。


 その日の夜。部屋で宿題をするわたしの隣で、アイスキャンディーを持った椿くんが小説を読んでいる。

 食後におやつを食べるタイプなんだ。クリーム系より、さっぱり系。
 絵より文章派なのは、椿くんのイメージからしてしっくりくるかも。

「……男の……友情」

「巻き込んじゃって、ほんとにごめんね。また明日、断っておくから」

 今朝の出来事を報告した。わたしたちが恋愛関係にあるのではという噂は、椿くんの耳にも入っていたらしい。

「安斎さんたちが変な行動しようなら、僕が椿くんを守っ……」

「いいよ」

 パタンと本を閉じて、椿くんはアイスキャンディーをぱくりと噛む。

「……え?」

「そのモデル、引き受けても」
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