八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「でも」

「元はと言えば、俺が原因だし。それでその子たちの気が済むなら」

 なんともない顔をして、最後のひと口を食べ終えた。

 大人な対応だ。同じ中学二年生とは、とても思えない。

「それより。珀、なにか言って来なかった?」

「琥珀さん? 特に、なにも。どして?」

「……別に。たいしたことじゃない」

 気になる間をあけて、椿くんが自分の机に本を伏せた。
 昨日から、琥珀さんの名前がよく出る。なんだろう?

 宿題を済ませて、寝る準備をしているところに、歯磨きを終えた椿くんが戻ってきた。
 特に喧嘩をしたわけでもないけど、少し空気が気まずい。

 パジャマのボタンを留めていると、隣に座った椿くんが先に口を開いた。

「あの噂、ほんとにしてみない?」

 一瞬、何を言われているのか理解できず、フリーズしていると。


「俺と付き合うってこと」


 キリッとした眼差しが、冗談じゃないことを知らしめる。

 目を合わせられなくて、視線を下げつつ。


「でも、今は……偽物、だよ、わたし」

 ごにょごにょと、語尾が小さくなっていく。

 主に男子の姿だし、学校の人たちに知られたらなんて思われるか。
 それにーー。
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