八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「すぐ戻るんだろうけど、念のため」

 丁寧に閉じられたカーディガンは、ぶかっとしていて、あらためて体格の差を感じた。

「……ありがと」

 なんだかくすぐったい。春のお日様を浴びているようなあたたかさ。
 ドキドキは止まらなくて、しばらくここから出られなそうだ。

「やっぱり、付き合ってることにしない?」

 パチリと目が合って、きょとんとした顔になる。

 表情の動きは少ないけど、椿くんの耳が赤くなっていることに気づいた。

「その方が……何かあったとき、碧のこと守りやすいと思うから。あと、変な虫がつかないようにも」

 どうしてそこまで、わたしなんかのために。

 いろいろ疑問や不安はあるけど、椿くんの優しさを素直に受け止めたい。今、嬉しいって感情が心に充満してるから。

「……うん。僕も、椿くんのこと守れるようにするね」

 ギュッと抱きしめられて、動けなくなる。
 付き合ってることにするとしても、学校でハグは危険すぎるよ。誰が見てるか分からないのに。

 背中をバシバシと叩こうが、離す気配はない。

「……碧、マジで可愛いすぎ」

 耳元でささやかれて、余計に顔が熱くなる。心臓がおかしくなりそう。

 抱きしめられたまま、腕のたゆんだシャツをくっと掴む。

 もう少しだけ、このまま。
 神様、わたしたちを隠してください。
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