八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
藍くんのドキドキバースデー
 八城家で居候が始まって、初めての休日。
 午前九時半。部屋でまったりしていたら、ひょこっと現れた琥珀さんに手招きされて家を出た。

 どこへ行くんだろう?

 連れられるまま、しばらく歩いて行くと、小さな神社が見えてきた。赤い鳥居に、龍の飾りが巻きついている。

 この景色、どこかで見たことがあった。初めて来た場所だから、そんな気がするだけだと思うけど。

 神社を通り過ぎて、たどり着いたのは、ショッピングセンター。
 ここでようやく、明日の歓迎パーティーの買い出しに付き合ってほしいと知らされた。

 申し訳ないと断ったけど、いいからと押されてしまった。

「まあ、手伝ってっていうのは口実で、アオイくんの気分転換が目的なんだけどね」

 言いながら、琥珀さんは目の前にある雑貨屋さんを指差す。

「僕の……気分転換?」

「いきなり初対面の人間と生活を共にするって、疲れるでしょ」

 きらりと笑う琥珀さんは、王子さまそのもの。こんなことをさらっと言えてしまうのだから、女子から人気があるのもうなずける。

 高等部ではもちろんのこと、中等部にまでファンがいるらしい。

 可愛らしい置き物や小物が並んでいて、進んでいくとヘアアクセサリーや耳飾りが目に入った。
 月の形をしていて、エメラルドグリーンのガラス細工がアクセントになったもの。

「……キレイ」

 手に取ってみると、角度によってキラキラと輝いて見える。

 高校生になったら、おしゃれをしてみたいと思っていた。その願いは、叶いそうにないけど。
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