八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 食材や飾り付けを買って帰宅すると、椿くんがちょうど二階から降りて来た。

 ただいまと声を掛けようとしたら、ふいっとリビングへ行ってしまった。
 なんだか機嫌が悪そう。何かあったのかな。

 エコバッグから買った物を取り出していると、ソファーに座っていた椿くんがふらっと現れて。

「どっか出かけてたの?」

 カウンターに置いたリンゴとブロッコリーを、冷蔵庫へ入れた。
 手伝ってくれるってことは、気のせいだったのかな。

「うん、明日藍くんの誕生日パーティーすることになったんだ!」

 ウキウキと返したけれど、反応はない。
 やっぱり様子がおかしい。

 無表情の椿くんが何を考えているのか分からず、首をかしげると。背中から抱きしめられて、思考が停止した。

「……椿くん?」

「珀と二人で? 気をつけろって、言ったよね?」

 さらに強く締め付けられて、心臓がドッと音を鳴らす。

「急に、どうしたの? 買い出し、しただけだよ」

「碧は、仮にも俺と付き合ってるんだよ? 他の男と二人きりで買い物とか、すげぇ妬ける」

 話すたび、耳に息がかかってぞわぞわする。

 わたしもだけど、椿くんの心音も大きく響いて、余計に呼吸が苦しくなった。

「ちょっ、ここ家……誰か来たらどうする……」

「俺、嫉妬深いらしいから。あんま(あお)らないで」
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