八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 真っ赤になった首で、ゆっくりうなずく。
 ダメなのに、イヤじゃない。
 むしろ、まだこのまま触れていたいだなんて、わたしどうかしてる。

 その時、バタバタと足音が聞こえてきて、わたしたちは即座に距離を取った。

 勢いよく入ってきた藍くんが、不敵な笑みを浮かべて近づいて来る。

「おっ、いいところに発見。なあ、これなーんだ?」

 ニマニマとしながら、藍くんがスマホ画面をチラつかせた。

 なんだろう?
 覗いて目に飛び込んで来たのは、裏庭で抱き合っているわたしと椿くんだった。ちょうど、安斎さんたちと別れた直後だ。

「これ、椿と碧だろ。お前らどうゆう関係?」

 面白がって笑う様子に、血の気が引いていく。

 藍くんに見られていたなんて……。どう答えたらいいの?

 チラリと隣に視線を送ると、椿くんは微動だにせず、ため息をひとつ落として。

「……付き合ってる」

 さらっと言うから、わたしも藍くんも、口をあんぐりと開けたままで数秒間。


「は? マ、マジで……?」

 予想外の返答だったのか、炭酸の抜けたサイダーのような声が藍くんからこぼれた。


「……ってことにしてる。その方が、告白された時、断りやすくなるから」
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