八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 わたしに協力してもらっているのだと、椿くんは付け足した。

 学校でそう振る舞うなら、遅かれ早かれ八城家のみんなの耳にも入る。それなら、変に隠さない方がいいってことなのかな。

「碧はそれでいいのかよ」

 パーティー用に買ってきたジュースをプシュッと開けて、藍くんが喉を鳴らす。

「なに、が?」

「要は、椿に利用されてるってことだろ? 男としてのプライド、ねぇの?」

 あきれた顔で、わたしを見下げた。


 ーー何かあったとき、碧のこと守りやすいと思うから。

 表向きは、椿くんに協力してるていになってるけど違う。

 わたしの正体がみんなにバレないように、守ろうとしてーー。

「そんなことな……」

「椿ってさ、まだあのこと引きずってんでしょ」

 言いかけた言葉が、途中で音を失くした。
 藍くんの声に吸い込まれるみたいに。

 それより重大なのは、今まで一切変わらなかった椿くんの表情が反応を見せたこと。

 目や唇の動きが不自然で、動揺してる。

「ちょっ、なにすんだよ。おい、無言で、(さら)うな」

 そのまま藍くんを連れて、リビングを出て行ってしまった。

【あのこと】って、なんだろう。あきらか、わたしに知られたくない感じだった。
 誰にだって、秘密にしたいことのひとつやふたつある。

 気にしないようにと、買ったものを入れ終えて冷蔵庫を閉めた。

 なのに、どうしてかな。胸の奥がズキンと痛む。

 知りたくて仕方ないと、心が叫んでいる。
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