八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 日曜日の午前。コトコトと鍋で野菜を踊らせながら、オーブンでチキンを焼く。

 藍くんが起きてこないうちに、パーティーの準備をしているのだ。

「これ、どう切ったらいい? 適当でいいかな」

 危なっかしい手付きで、琥珀さんが包丁を握る。

「ああっ、ちょっと待って下さい。あんま大きすぎると、火の通りが遅くなっちゃうんで」

 アドバイスしようとしたところで、椿くんが遮るように入って来た。
 貸してと慣れた様子で、鮮やかに刃先を入れていく。

 すごい……、わたしより上手いかもしれない。

「椿、どこでそんなの覚えたの?」

「……学校の調理実習でやっただけ」

「飲み込みよすぎでしょ。というか、どうせなら、アオイくんに教えてもらいたかったけどね」

「……よそ見してると、指切るぞ」

 サクッと包丁を動かす椿くんに、「危ない危ない!」と、琥珀さんの顔が青ざめていた。

 そんな二人のやりとりを見て、思わず笑みがこぼれる。
 みんなで協力して用意した手料理、藍くんに喜んでもらえるといいな。


 階段を降りてくる音がして、リビングのドアが開く。

「藍くん、ハッピーバーズデー!」

 入ってくると同時に、クラッカーを引いた。

 カラフルな紙吹雪が舞って、ぽかんとした藍くんの頭に乗っかる。

「……なん、これ?」

「僕の歓迎会と、藍くんの誕生日祝い。ご飯のあとに、ケーキもあるよ」

 ワクワクしすぎて、立ち尽くす藍くんの腕をこっちと引っ張った。
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