八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 いきおいよく振り払われた手が、行き場を失くす。

 迷惑だったかと、不安になるけど。

「や、やめろよ。中学にもなって……恥ずかしい奴」

 照れているのか、藍くんの頬がサラダのトマトみたいにほんのりと染まっていた。

 反抗的な態度のわりに、ちゃんと席に座って料理を食べ始める。食べ物に罪はないとか言いながら。

 素直じゃないなぁ。クスッと唇を上げながら、わたしも卵スープを口にした。おいしい。

 日頃から、お母さんの手伝いで料理はしていた。
 不安ではあったけど、見よう見まねでなんとか出来るものなんだ。

「……これ、作ったの誰?」

 気づくと、藍くんが海老グラタンの皿を持っていた。

 自信はないけど、お母さんの味を思い出して作ったもの。

「アオイくんだよ。大好物なんだって。藍と同じだね」

 緊張と不安が押し寄せてきて、スープと一緒にごくんと飲み込む。

「……ふうん。まっ、けっこう上手いんじゃね」

 もう一度、グラタンを口に運ぶ姿を見て、ホッと肩の力が抜けた。

「よかった。口に合うか、内心ひやひやしてたから」

 食事が終わって、みんながまったり過ごし始める。
 プレゼントの包み紙を開ける藍くんの隣りで、琥珀さんが微笑ましそうに見守っている。

 こうゆうのいいな。温かい気持ちになりながら、ケーキを取りに立とうとしたら。
 横に座る椿くんが、いきなり手を握って来た。
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