八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「今のはグラスの代償」

 ペロッと舌を出して、してやったりな顔をしている。
 いつもの優しくて穏やかな琥珀さんじゃない。

「あっ、そうだ。お風呂で倒れた時、部屋まで運んだお礼はまた後日してね」

 頭をポンポンとして、言いたいことだけ言ってリビングを出て行った。

 待って、お風呂の件は椿くんじゃなかったの?
 だとしたら、わたしが女だってことに気付いてる?

 はっきり言われたわけじゃないけど、どっちなんだろう。


 少しして、椿くんと藍くんが他の片付けから戻って来た。

 目を合わせづらくて、下ばかり向いてしまう。

 ーー気をつけなよ。特に、珀には気を許すな。

 今さらになって、椿くんの言葉の意味を理解する。

 わたし、琥珀さんにキスされちゃったんだ。ほっぺでも……、初めてだったのに。

 ズキズキする胸は、まるでガラスの破片が突き刺さるかのような痛みだった。
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