八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
スキ、キライ、キスはダメ
 休みが明けて、学校が始まる。
 いつもより早く家を出たら、すぐあとから琥珀さんが追いかけて来た。

「アオイくん、今日早いね」

 腰に手を回されて、ぐっと引き寄せられる。脳内指令で、すぐさま手が鼻から下を隠していた。

「なんか、あれから警戒されちゃってる?」

 当たり前です。
 家の中でバッタリ鉢合うと、逃げるようにその場を離れているのだ。

 目で訴えていたら、遅れて来た椿くんが間に割り込んで来た。

「なに、椿。まだアオイくんと話してるんだけど」

「……そんなふうに見えないけど。これのどこが?」

 口元を押さえるわたしを見て、椿くんはジロリと視線を動かす。

 今朝からピリピリしていたけど、いっそう増した気がする。

「なーんか、アオイくんの番犬みたい」

 爽やかな顔をして、琥珀さんがサラッと毒舌を吐く。

 無言の椿くんから、視線をこちらへ向けて。「じゃあお先に」とキラキラスマイルで、去って行った。

 数分もしないうちに、すでに何人かの女の子たちに囲まれている。

 紳士な王子さまだと思っていたけど、琥珀さんって、たらしさんだったんだ。今なら納得。

 ガードしていた手を下ろすと、すかさず椿くんが顔をのぞき込んで。

「……珀と何かあった?」
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