八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「よっ、三葉くん」

「おはようございます〜」

 悪びれもなく、のん気に手を振っている安斎さんと矢野さん。ここにいるということは、おそらく。

「……のぞき見?」

 ギクリと肩を動かして、二人はウシシと互いを見合う。

「ほんとはツバミツ待ちだったけどね。普通に女子連れて来ちゃうんだもん」

「そうそう。現実はそんなものですよね〜」

 腕をからめながら、どっぷりと二人の世界に浸かっている。

 ……ツバミツって、なんだ?
 疑問に思いながらも、キャッキャと楽しげに話す姿に、羨ましさがふくれていく。

 わたしも、こんなふうに誰かといられたらな。

「うちら、三葉くんと椿さまが、ほんとにくっついちゃえばいいと思ってるんだよ」

「そうそう。それが純粋な願いです〜」

「……でも、僕たち男同士だから」

 言ってハッとする。
 そういえば、付き合ってることにするんだった!

 今にでも訂正した方がいいのか。そもそも、そんな嘘をつく必要あるかな。

「女に取られるよりマシだよ。世の中のアイドルとか有名人ファンの人には、この気持ち理解してもらえる。きっと」

「……えっ、そうゆうものなの?」

「ヨコシマな想いで近く女の子たちより、友情が愛に変わる物語の方が推せますしね〜」

 同性同士のカップルが受け入れられつつあるのは知ってるけど、身近でまだ出会ったことはない。

 実際に、こうして抵抗ない人たちもいるんだ。

 でも、わたしが女子だと知ったら、二人はどう思うんだろう。
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