八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 夜の八時。夕食が終わって、椿くんはお風呂へ入っている。それを見計らったかのように、部屋のドアが開いた。

 シーッと人差し指を立てながら、忍び足の藍くんがニヤリと入ってきた。

「えっ、ちょっと、なにして……」

「決まってんだろ。写真見に来たんだよ」

 なんとなく勘づいてはいたけど、あまり気が乗らない。

 人の物を勝手に物色するなんて、しかも本人が見られたくないものだとしたら。

「なんだよ。碧だって、見たいって言ってたじゃん」

 ベッドに腰を下ろしながら、藍くんはイタズラに眉を上げる。

「……そうなんだけど。やっぱり、よくない気がして」

「ちゃんと元に戻せばバレないって」

 おもむろにクローゼットを開けて、藍くんがハンガーにかけられている制服を探り出す。

「だから、そうゆうことじゃなくて……」

 おろおろと後ろに立つだけで、止めることができない。
 藍くんは聞く耳を持ってくれないし、どうしたらいいの。

 制服のポケットになかったのか、今度は通学カバンへ手をつけた。

「もうやめよ。椿くん、いつ戻ってくるか」

 その時、部屋のドアが開く音がして、ヒヤリとしたものが背筋を流れる。

 気付けば、わたしはクローゼットの中へ引きずり込まれていた。
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