八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「えっ?」

 両腕を掴まれて、グッと顔が近付いた。

「今、碧ちゃんだよな」

 ーーバレている。

 胸元を隠すようにして、視線をそらす。

 実は、昨夜から女子に戻ったままで、男子の体になっていない。

 本来なら喜ぶべきなんだろうけど、男子として生活しているからそうもいかないのだ。

「……もしかしたら、思春期病が治ったのかも」

 生理的な症状で、なにかをきっかけに改善することがほとんどだと、調べた記事に書いてあった。

「どうして学校休まなかった」

「……あっ、思いつかなかった。そっか。休んだらよかったね」

 どう乗り切ろうかとばかり考えていたけど、その手があった。

 ため息を吐きながら、椿くんは頭を押さえる。

「バレたらどうすんの。碧は危機意識がなさすぎる」

 出会った当初は無表情が多くて、何に関しても関心がなさそうだった椿くんが、こんな顔をするなんて。

 わたしのこと、ほんとに心配してくれているんだ。

「……ごめんなさい」

「なにかあったら、すぐ呼んで。今日は、あまり人に近づかない方がいい」
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