八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 忠告を受けて、なるべく誰とも関わらないようにしていた昼休み。裏庭でひっそりと過ごしていたら、安斎さんと矢野さんが現れた。

 なぜか片手にカメラを持って、意味ありげな顔で近づいてくる。

「二人とも、なに? なんか怖いよ」

 わたしの両脇に腰を下ろす彼女たちから、逃げるように離れた。不自然だけど、腕は組んだままで。

「三葉くんの写真、撮らせてくれない?」

「えっ、なんで?」

 安斎さんのお願いに、少し警戒してしまう。

 まさか、わたしが女子だってバレてる?

「理由なんてひとつしかないじゃない〜」

「そうそう。お姉さま方に頼まれたんです」

 どうやら、高等部の先輩たちに指令を受けたらしい。八城兄弟と、なぜかわたしも一緒に写っている写真が欲しいと。

「彼らは言うまでもないけど、三葉くんも人気あるみたいだよ。八城藍様と並んで、可愛いって」

 年下にまで様をつけるなんて、相当だ。

 でも、今この状態で撮られるわけにはいかない。だって、女子の体なんだもん。

 どう断ろうかと考えていたら、人の足音が聞こえてきた。

 呼び出していたのか、椿くんと藍くんが合流してしまった。目が合ってさっそく、藍くんがわたしをじろっと見て。

「……碧、なんで腕なんか組んでんの? らしくねぇの」

 怪しむような声をあげた。
 もうすでに、心臓が穏やかではない。
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