八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「よし、そろったね! んじゃあ、乗り込もっかね」

 安斎さんが腕まくりをする隣で、矢野さんが鼻息をフンと吹く。

「えっ、どこへ?」

 まさかと思いながら問いかけると、当たり前という口調で返ってくる。

「もちろん、高等部よ!」

「……待て。それは、いくらなんでも無謀じゃない? 高等部には、そう簡単に入れない」

 冷静な態度で、椿くんがつぶやく。
 とりあえず、うんうんとわたしもうなずくけど、チッチッチッと安斎さんの人差し指が動いた。

「一般生徒は、でしょう? 兄弟がいる場合、侵入の許可が出る場合もある」

「うちらが何も知らないおなごだと思ってもらったら、困りますよ〜」

 フンッと鼻をならし、矢野さんのメガネがキランと光る。

「で、でも……! みんなで押しかけたら、琥珀さんに、迷惑かけちゃうだろ。そんなことしたら、嫌われちゃうかも……しれないよ? 君たち」

 なんとか止めようと、必死にアレコレと浮かぶ言葉を出していく。
 二人がうーんと口を曲げ出した。

「めんどくさいし、オレもパス! 友達とバスケする予定あるから、もう戻っていい?」

 藍くんも、便乗している。
 よし、この調子なら阻止できそうだ。あと、もう一押し。

「じゃあ、ハクツバとランアオの絡みツーショット撮らせてくれたら諦める」

「……ランアオ?」

 安斎さんの発言に、椿くんがピクリと反応した。
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