八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 男子の背後から声が降ってきて、体がびくりと跳ね上がる。

 目に入ったのは、王子様みたいなさらさらした金髪。
 聞き覚えのある穏やかな声はーー。

「やべ! 八城琥珀じゃん」

 怯えにも似た声を出す男子。彼の腕を捕らえて、琥珀さんがわたしを見下ろした。

 その瞳が、この上なく冷静で冷たく感じて、ごくりとのどが鳴る。

「こ、これは……その。どっちなのか、確かめようと思って」

 しどろもどろと話す男子に、視線を向けることなく。

「ふーん。どっちか?」

「お、男か……女か」

「そんなの、決まってるでしょ」

 フッと笑う琥珀さん。わたしのシルエットを見てから、おもむろにカーディガンをめくり上げた。

 やっ、なにして……ダメ!

 あまりに突然のことで、抵抗出来なかった。
 腹ともう少し上の部分があらわになって、涙目になる。

 すぐにシャツを下げたけど、もう、終わりだ……。

「三葉碧は、男だよ。わかったら、今すぐ消えてくんない?」

 あれ? 膨らみがない。
 いつの間にか、男子の姿になっていた。

 さっきまで、女子に戻っていたのに。間一髪で、助かったみたい。

 血相を変えた彼らは、ものの数秒で立ち去って行った。

 気が抜けて、その場に崩れ落ちそうになるわたしを、琥珀さんの手が受け止める。

「……アオイくん。どうして高等部にいるの?」
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