八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 セーラー服を着ているけど、どこの学校かまでは分からない。

「あれは、たしかサン中の制服ですね」

 矢野さんの言葉に、安斎さんが深くうなずく。

 サン中こと太陽中学校は、だいぶ離れた位置にある学校らしい。自転車でも、三十分近くはかかるのだとか。

 どうしてそこの生徒が、制服姿でこんなところに?

「八城兄弟は有名だから、いろんなところに追っかけがいても不思議じゃないもんね」

「そこまで?」

「そうそう。八城様をなめてちゃダメですよ〜。アイドル並みの人気ありますから〜」

 少し離れたところから、写真を数枚撮って尾行を続ける。

 ショートカットでキレイな感じの女子と、ロングヘアの可愛らしい子。普通に見たら、モテそうな雰囲気の子たちだけど、本当にストーカーなのかな。

 藍くんと同じバスに乗って、同じ場所で降りた。あとをつけているのは、間違いない。

「ねえ、三葉っち。いつ乗り込む? いついつ?」

「え?」

「ふぅー、なんだかドキドキしてきました!」

 両となりから荒い鼻息を感じて、待て待てと落ち着かせた。

「そんなことしないから。まだ、決定的証拠を押さえてないだろ」

 彼女たちの腕をつかみながら、後退する。

 作戦もなにもあったもんじゃない。見つかったら、逃げられて終わり。藍くんとの約束を果たせない。
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