八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 擦りむいて、ひざから血が出ている。

 手を差し伸べたら、その子は素直に手を取ってゆっくりと立ち上がった。

「あんたが追いかけてきたから、転んじゃったじゃん」

 涙を浮かべながら、必死に押し殺した声を出している。

「その手の中にある物、返してください」

 わたしが右手を指差すと、こぶしにしたまま手のひらで隠された。

「これは……私のだよ」

 たぶん、引くに引けなくなっているんだ。

「じゃあ、どうして逃げたの?」

「急に大声出されたから、びっくりしたんだよ! それに……」

 しどろもどろになって、女の子の声が小さくなっていく。

「嘘つくなー! こっちは決定的瞬間バッチリ撮ってるんだ」

「そうそう。ムダな抵抗はやめて、おとなしく降参してください〜」

 プンプンと効果音を立てながら、追いついた二人が口を開いた。

 続けて、藍くんが前に立つ。無言で見つめると、女の子は頬を染めて下を向いた。

 通り過ぎて行く人たちが、ジロジロと見て行く。

「ここだと目立つから、あっちで話そう」
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