八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「……これって」

 緑色の守袋(まもりぶくろ)に、白い龍が描かれている。

 龍って、珍しい気がするけど、なぜか初めて見る気がしなかった。

 パシッと勢いよく取り上げると、藍くんが少し声を荒げる。

「オレの……大事なもんなんだよ。こうゆうこと、やめてくんないかな」

「ご、ごめんなさい。私たち、藍くんのファンで……身につけてるもの、どうしても欲しくて」

 小さくなる語尾が、少しふるえていた。

「だからって、人の物勝手にとっちゃ泥棒と同じ。許可取ったらいいんだよ。ねっ!」

「そうそう。誰だって、欲望と戦ってるんですからね〜。もらえるものなら、うちらだって欲しいです〜!」

 安斎さんと矢野さんの話を、どこかずれているという目で見るわたしたち。

 とりあえず、藍くんの手にお守りが返ったことに安心した。

 もうしないと約束してくれたから、和解できたってことでいいのかな。

「ほんとに好きなら、悲しませるようなことしたらダメだよ。藍くんの幸せを願ってあげられるようになったら、それはもう本物だね」

「……はい」

 根は悪い子じゃなさそうだし、これで改心してくれたらいいな。

 一件落着。そう思っていたら、また頬を染めながら、彼女が「あの……」と口を開いた。

「あなたの名前……聞いてもいい?」

「えっ、僕?」
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