八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 ーー体が戻ってる⁉︎
 とっさに、落ちていた枕を抱えて膨らみを隠す。

 状況が分からないけど、とりあえずごまかさないと!

「じ、実は椿くんを驚かせちゃえと思って! タオル詰め込んでおいたんだよな〜。寝起きドッキリ! どう、ドッキリ……した?」

 苦し紛れの言い訳。信じてもらえるとは思えないけど、黙り込んだら余計に怪しまれそうで。

 引きつりそうな唇をあははと動かして、恐る恐る椿くんへ視線を向ける。

 予想外な真顔の瞳に、ごくりと喉が鳴った。にこりともせず、ただじっと見つめて。

「そりゃ……ドキドキするでしよ」

 思ったのと違う答えが返ってきて、わたしは目をパチクリと動かす。

「……へ?」

「碧が女子だったら、絶対かわいい」

 そんな面と向かって真剣に言われたら、わたしじゃなくても赤面しちゃうよ。
 だって、か、か、可愛いだなんて、男の子に言われたことなど一度もないのに!

「な、なに言い出すんだよ〜! もしかして、椿くんの方が頭打ってんじゃない……か?」

 わざとらしく笑ってみるけど、椿くんは顔色ひとつ変えずに腰を上げた。


「……かもな。先、下行ってる」

 ドアが閉まるのを確認して、ぐたりとベッドへ倒れ込む。

 あ、あっぶない。
 なんとかごまかせたみたいだけど、どうして胸があるの?

 今気付いたけど、下の方の違和感もなくなっている。

 性別が逆転した原因も、治った理由も不明だけどーーこれからの居候生活が大変になることだけは分かった。
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