八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 その週の日曜日。任務(にんむ)の日が訪れた。

 中学校前のバス停で待ち合わせて、約束のショッピングモールまで向かう。

 映画を見ることになっているのだけど、すでに今から緊張で口から心臓が出そうだ。

「三葉っち。今日は、来てくれてありがとね」

 となりに座る穂村さんが新鮮で、じっと見てしまう。

 いつもの制服じゃなくて、私服なんだもん。モノトーンなコーディネートで大人っぽい。
 髪は巻いてあるのか、ふわっとしたポニーテールになっていて、可愛すぎる。

「いえいえ。ボロ出さないように、頑張るよ」

 その点、わたしはブラウンのシャツに黒いパンツ。男子の姿だから仕方ないのだけど、落差が激しくて悲しくなる。

 いつかわたしも、こんな風にオシャレをして、椿くんのとなりを歩けたらいいな。

 妄想を繰り広げていると、穂村さんの手がわたしの腕を掴んだ。

「あのさ、三葉っち」

 チラリと目が合う。
 ん? と首をかしげたら、心なしか穂村さんの頬が赤くなった気がする。

「呼び方……なんだけど。苗字だと、怪しまれるかもしれないから……名前で、呼んでくれる?」
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