八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 遠野さんの彼氏に、偉そうなこと言ったくせして。最低なのは、自分じゃない。

「穂村さんのこと、怒らせて当然だなって。ごめんね」

「……名前。呼ばれたくないなら、そう言ってよ。みやだけ舞い上がって、バカみたいじゃん」

「……え?」

 照明が暗くなって、切なそうな横顔が消えていく。

 知ってる。わたしだって、女子だもん。

 スクリーンの反射で、こっちを向いた顔がパッと写った。

「バカ。ど・ん・か・ん!」

 プイッとして、穂村さんは前を見る。

 これは、恋をしている女の子の顔だ。そう気付いたら、胸の奥が苦しくなった。

 映画の内容に集中できなくて、上の空で時間が過ぎた。

 みんなでワッフルを食べてから、解散することになった。これからどうするか話していたら、穂村さんが帰ろうと言い出したのだ。

 わたしとしては、賛成。ウソカレであることを、気づかれないうちに終わりたい。
 あと、遠野さんがわたしを思い出す前に。

「ねえねえ、ミツバくんって、みやのことそんな好きじゃないでしょ」

「……え?」

 いきなり顔をのぞきこまれて、背筋がゾクッとした。
 遠野さんの大きな目が、わたしを見さだめるようにじっと見ている。

「距離があるって言うか、好き同士って感じしないんだよね」
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