魅了たれ流しの聖女は、ワンコな従者と添い遂げたい。
◆◆◆
(うぅぅ、アイリ様に好きな人がいらっしゃるとは………!)
ショッキングなことを聞いてしまって、俺は心の中で嘆き悲しんだ。
いったい誰なんだ!
アイリ様はそんな素振りを一度もお見せになったことはないのに!
身分差があるということは、高位貴族か?
切なげなお嬢様のお顔を見るだけで、キリリと胸が痛む。
アイリ様を悲しませるなんて許せん! 誰だ!?
もちろん、アイリ様は貴族で一人娘だから、そのうち、男爵が何某かの婿を連れてくることは想定していた。
聖女と認定されなかったら、今頃、婚約されていてもおかしくはない。
それも嫌だが、アイリ様に懸想する相手ができるなんて、不思議なことに想像していなかった。
男を魅了してしまうやっかいな体質のせいで、男性不信気味だというのもあるかもしれない。
気軽にアイリ様が話せるのは俺だけだと思っていたのに。
くぅぅぅーーー!
なんて、思っていたら、本当にアイリ様が魅了魔法を使っていると、公爵令嬢が言う。
(本当なのか?)
アイリ様が魅力的すぎて、男どもが群がってくるのは当たり前だと思っていた。しかし、確かに、王太子どもの反応は過剰だったかもしれない。
それにしたって、アイリ様は悪くない。
泣きそうになっているアイリ様をおなぐさめしたい。
そんなことを思っていると、自室に戻ったアイリ様は俺に抱きついてきた。
「カイル、怖かった~!」
甘い匂いが鼻をくすぐって、身体には柔らかいものが当たっている。まるで天国にいるような気分だ。いや、今すぐ天国に行ってしまいそうだ。
(うわあああ、俺を殺す気ですか!!!アイリ様!!!)
しかし、アイリ様の花嫁姿を見るくらいなら、俺はこのまま死んでしまってもいいかもしれない。アイリ様に抱きしめられて死ぬなんて、最高に幸せな死に方じゃないか。
(いや、ダメだ! そんなことをしたら、アイリ様が悲しまれる!)
衝動をなんとか押し殺し、ポンポンとなぐさめるように華奢な背中を叩く。
「私、本当に魅了魔法なんか使ってるのかな? でも、カイルはかかってないわよね?」
至近距離から目を覗き込まれて、鼻血が噴き出しそうだ。前髪のカーテン越しでよかった。こんな近くで潤んだココア色の瞳に直接見つめられたら、きっと失神してしまうだろう。やっぱり髪を短くできない。
(アイリ様、カイルはあなたに魅了されまくっています!!!)
だが、お嬢様が聞きたいのはそういうことではないだろう。
魅了魔法にかかっているかと言われたら、それは否だ。
そんなものがなくても、アイリ様の魅力は強烈で、惹かれて惹かれて仕方がない。
「そうですね。俺は魅了魔法にはかかっていません」
意識して落ち着いた声で答える。
「そうよね。どうしてだろう? 魅了魔法の効き具合に差があるのね」
確かに、俺の目から見ても、王太子とその側近が重傷で、それ以外の男子生徒でアイリ様にあからさまに近寄ってくる者は限られる。そういえば、同じクラスより、高位貴族のクラスの生徒が多いかもしれない。
そんなことより、小首を傾げたアイリ様の愛らしさといったら、天使が降臨したよう。
(か、かわいいーーー!!!!!)
やはりここは天国か?
アイリ様の考察を聞きながら、俺は湧きおこる情動に耐え続けた。
(うぅぅ、アイリ様に好きな人がいらっしゃるとは………!)
ショッキングなことを聞いてしまって、俺は心の中で嘆き悲しんだ。
いったい誰なんだ!
アイリ様はそんな素振りを一度もお見せになったことはないのに!
身分差があるということは、高位貴族か?
切なげなお嬢様のお顔を見るだけで、キリリと胸が痛む。
アイリ様を悲しませるなんて許せん! 誰だ!?
もちろん、アイリ様は貴族で一人娘だから、そのうち、男爵が何某かの婿を連れてくることは想定していた。
聖女と認定されなかったら、今頃、婚約されていてもおかしくはない。
それも嫌だが、アイリ様に懸想する相手ができるなんて、不思議なことに想像していなかった。
男を魅了してしまうやっかいな体質のせいで、男性不信気味だというのもあるかもしれない。
気軽にアイリ様が話せるのは俺だけだと思っていたのに。
くぅぅぅーーー!
なんて、思っていたら、本当にアイリ様が魅了魔法を使っていると、公爵令嬢が言う。
(本当なのか?)
アイリ様が魅力的すぎて、男どもが群がってくるのは当たり前だと思っていた。しかし、確かに、王太子どもの反応は過剰だったかもしれない。
それにしたって、アイリ様は悪くない。
泣きそうになっているアイリ様をおなぐさめしたい。
そんなことを思っていると、自室に戻ったアイリ様は俺に抱きついてきた。
「カイル、怖かった~!」
甘い匂いが鼻をくすぐって、身体には柔らかいものが当たっている。まるで天国にいるような気分だ。いや、今すぐ天国に行ってしまいそうだ。
(うわあああ、俺を殺す気ですか!!!アイリ様!!!)
しかし、アイリ様の花嫁姿を見るくらいなら、俺はこのまま死んでしまってもいいかもしれない。アイリ様に抱きしめられて死ぬなんて、最高に幸せな死に方じゃないか。
(いや、ダメだ! そんなことをしたら、アイリ様が悲しまれる!)
衝動をなんとか押し殺し、ポンポンとなぐさめるように華奢な背中を叩く。
「私、本当に魅了魔法なんか使ってるのかな? でも、カイルはかかってないわよね?」
至近距離から目を覗き込まれて、鼻血が噴き出しそうだ。前髪のカーテン越しでよかった。こんな近くで潤んだココア色の瞳に直接見つめられたら、きっと失神してしまうだろう。やっぱり髪を短くできない。
(アイリ様、カイルはあなたに魅了されまくっています!!!)
だが、お嬢様が聞きたいのはそういうことではないだろう。
魅了魔法にかかっているかと言われたら、それは否だ。
そんなものがなくても、アイリ様の魅力は強烈で、惹かれて惹かれて仕方がない。
「そうですね。俺は魅了魔法にはかかっていません」
意識して落ち着いた声で答える。
「そうよね。どうしてだろう? 魅了魔法の効き具合に差があるのね」
確かに、俺の目から見ても、王太子とその側近が重傷で、それ以外の男子生徒でアイリ様にあからさまに近寄ってくる者は限られる。そういえば、同じクラスより、高位貴族のクラスの生徒が多いかもしれない。
そんなことより、小首を傾げたアイリ様の愛らしさといったら、天使が降臨したよう。
(か、かわいいーーー!!!!!)
やはりここは天国か?
アイリ様の考察を聞きながら、俺は湧きおこる情動に耐え続けた。