魅了たれ流しの聖女は、ワンコな従者と添い遂げたい。
「ちょっと! 話が違うじゃない!」
怒りの表情のエブリア様がうちのクラスに乗り込んでこられたのはその数時間後だった。
「アイリ様、全然治ってないわ!」
「え、そんな……」
エブリア様の剣幕に、私はカイルの背中に隠れようとしたけど、教室から引っ張り出された。
サロンに行くのも待ち切れないご様子で、廊下で扇子で口元を覆ってひそひそとエブリア様が話し出す。
王太子殿下はエブリア様の話を聞いてくれないどころか、逆に陰謀だと決めつけ、叱咤されたそうだ。
「どうして? ずっと努力してきたのに! やっぱり私は悪役令嬢になるの? 婚約破棄されてしまうの?」
青褪めてまた謎のことをつぶやくエブリア様。
ショックを受けられている様子に、おなぐさめしようと口を開きかけたとき、鋭い声が響いた。
「エブリア! アイリの手を離せ! そなたはアイリを呼び出してはいじめているそうだな。今後、アイリに近づくことは許さない!」
険しい顔をした王太子殿下だった。
「王太子殿下、誤解です。エブリア様は……」
「アイリは優しいな。お前が無理やり連れていかれているところを何人も見ているのだ。そして、落ち込んだ顔で出ていくところも。今だってそうだろう。もう大丈夫だ、アイリ」
見当外れなことを言い、殿下が私をエブリア様から引き離した。
「傲慢でわがままで陰謀を張り巡らせる狡猾な女につきあわされて大変だったな」
周囲がざわついた。
教室のすぐ近くの廊下なので、興味津々に聞いている人が多い。
(王太子殿下、それはいったい誰のことですか?)
首を振って否定し、エブリア様を見ると、泣きそうになったお顔を扇子で覆い、ごまかされていた。
(エブリア様!)
扇子をパチンと閉じると、澄まし顔に戻ったけれど、よく見ると、口許が震えている。
泣くまいと唇を引き結んだ表情を反抗だと誤解したようで、不快そうに殿下が言い捨てた。
「なんだ、エブリア。反論があれば言ってみるがいい」
エブリア様はなにも言えず、黙って頭を下げた。
「王太子殿下! 違います! エブリア様はお優しくて、サロンで美味しいお茶とお菓子でもてなしてくださったり、さっきも頬の落ちそうな昼食を……」
「あぁ、お前のところは貧乏で碌なものが食べられなかったのだったな。これからは私と昼食をとろう。もっと美味しいものを食べさせてやろう。大丈夫だ。私が守ってやるから」
「いいえ、そういうことではなく……」
殿下は私には優しい眼差しで話しかけてくれるけど、全然うれしくない。
(だから、違うって言ってるのに! 守ってくれるのはカイルだけでいいわ!)
どうにか誤解を解こうと話しかけるけれど、王太子殿下はまったく人の話を聞かず、私の腰を持ち、そこから強引に連れ出した。
こうなったら、二人きりになったところを見計らって、浄化してやると意欲を燃やしたのだけど、側近の方がついて離れない。
それからというもの、私の警護ということで、常に側近の方が私のそばにいるようになった。
それは、警護というより、監視のようで、エブリア様にお会いすることもできなくなってしまった。
怒りの表情のエブリア様がうちのクラスに乗り込んでこられたのはその数時間後だった。
「アイリ様、全然治ってないわ!」
「え、そんな……」
エブリア様の剣幕に、私はカイルの背中に隠れようとしたけど、教室から引っ張り出された。
サロンに行くのも待ち切れないご様子で、廊下で扇子で口元を覆ってひそひそとエブリア様が話し出す。
王太子殿下はエブリア様の話を聞いてくれないどころか、逆に陰謀だと決めつけ、叱咤されたそうだ。
「どうして? ずっと努力してきたのに! やっぱり私は悪役令嬢になるの? 婚約破棄されてしまうの?」
青褪めてまた謎のことをつぶやくエブリア様。
ショックを受けられている様子に、おなぐさめしようと口を開きかけたとき、鋭い声が響いた。
「エブリア! アイリの手を離せ! そなたはアイリを呼び出してはいじめているそうだな。今後、アイリに近づくことは許さない!」
険しい顔をした王太子殿下だった。
「王太子殿下、誤解です。エブリア様は……」
「アイリは優しいな。お前が無理やり連れていかれているところを何人も見ているのだ。そして、落ち込んだ顔で出ていくところも。今だってそうだろう。もう大丈夫だ、アイリ」
見当外れなことを言い、殿下が私をエブリア様から引き離した。
「傲慢でわがままで陰謀を張り巡らせる狡猾な女につきあわされて大変だったな」
周囲がざわついた。
教室のすぐ近くの廊下なので、興味津々に聞いている人が多い。
(王太子殿下、それはいったい誰のことですか?)
首を振って否定し、エブリア様を見ると、泣きそうになったお顔を扇子で覆い、ごまかされていた。
(エブリア様!)
扇子をパチンと閉じると、澄まし顔に戻ったけれど、よく見ると、口許が震えている。
泣くまいと唇を引き結んだ表情を反抗だと誤解したようで、不快そうに殿下が言い捨てた。
「なんだ、エブリア。反論があれば言ってみるがいい」
エブリア様はなにも言えず、黙って頭を下げた。
「王太子殿下! 違います! エブリア様はお優しくて、サロンで美味しいお茶とお菓子でもてなしてくださったり、さっきも頬の落ちそうな昼食を……」
「あぁ、お前のところは貧乏で碌なものが食べられなかったのだったな。これからは私と昼食をとろう。もっと美味しいものを食べさせてやろう。大丈夫だ。私が守ってやるから」
「いいえ、そういうことではなく……」
殿下は私には優しい眼差しで話しかけてくれるけど、全然うれしくない。
(だから、違うって言ってるのに! 守ってくれるのはカイルだけでいいわ!)
どうにか誤解を解こうと話しかけるけれど、王太子殿下はまったく人の話を聞かず、私の腰を持ち、そこから強引に連れ出した。
こうなったら、二人きりになったところを見計らって、浄化してやると意欲を燃やしたのだけど、側近の方がついて離れない。
それからというもの、私の警護ということで、常に側近の方が私のそばにいるようになった。
それは、警護というより、監視のようで、エブリア様にお会いすることもできなくなってしまった。