魅了たれ流しの聖女は、ワンコな従者と添い遂げたい。
「怪我が治ったこともよかったし、私を忘れちゃわなくてよかったわ」
「はあ?」

 カイルのステップが乱れた。

「忘れるわけないでしょう? どうしてそんなことを?」
「だって、カイルが全然来てくれないんだもの。誰か他の人を好きになっちゃったかと思ったわ」

 ちょっと拗ねて、口を尖らせる。
 踊りながらも、カイルは慌てた様子で、ギュッと私の腰を引き寄せた。

「ありえない! 俺にはアイリ様しかいないんです。アイリ様以外は目に入りません。出迎えられなかったのは、エブリア嬢にサプライズするのだと言われ、断腸の思いで、ここで待っていたのです」

 うすうすそうかなと思っていたけど、やっぱりお茶目なエブリア様の仕業だったのね。
 陛下を巻き込んだこんな大掛かりなサプライズなんて、エブリア様しかできないわよね……。
 ちょうどにこやかにこちらを見ているエブリア様が目に入る。

(もう! ありがとうございます、エブリア様)

 


 パーティーが終わり、湯浴みを終え、ようやく私は解放された。王宮で与えられた部屋に戻り、ひと息つく。
 もちろん、カイルも一緒だ。
 カイルはもう私の従者じゃないから、別の部屋を与えられたけど、断って、私の部屋に来た。

「カイル……」

 ギュッと抱きつき、上を向くと、キスが落ちてきた。
 やわらかく何度も繰り返されるキスに息が上がる。

「アイリ様、お会いしたかったです」
「私も」

 見つめ合い、また唇を近づける。
 だんだんキスが激しくなり、カイルが私の体を確かめるようになでた。
 夜着のボタンを外されて、彼の手が忍び込んできた。
 円を描くように胸を手が這い、私は声を漏らした。

「あ、ぅんっ……」

 カイルにさわってもらえるのがうれしくて、彼にしがみつく。
 なのに、カイルはハッとして、身を離した。

「いけない! アイリ様はお疲れなのに!」
「ううん、いいの。私もカイルと繋がりたい」
 
 
◆◆◆


 ──私もカイルと繋がりたい。繋がりたい。繋がりたい……。

(わ〜、アイリ様、血が頭にのぼりすぎて、ぶっ倒れそうですぅぅぅ!!!)

 三ヶ月ぶりのアイリ様は変わりなく……いや、それ以上にキラキラ輝いていて、プロポーズを受けてくれたときの愛らしさといったら強烈で、御前だというのに押し倒したくなった。
 そして、このセリフ。
 相変わらず、アイリ様はとんでもなく可愛らしく俺を煽ってくれる。
 ギンギンに滾った。


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