魅了たれ流しの聖女は、ワンコな従者と添い遂げたい。
俺は刺されて、三日間眠っていたようだ。
目が覚めて、置いていかれたことを知り、悲しみに暮れた。
(常にアイリ様のおそばにいて、お守りしたかったのに)
しかも、お戻りは数カ月後だという。
今からでも追いかけられないかなんて思っていたとき、エブリア嬢が見舞いにきてくれ、計画を聞かせてくれた。
なんと俺を貴族にして、アイリ様との結婚資格を得るようにしてくれるとのことだった。
(孤児の俺が、一代とはいえ、貴族?)
有り難いけれど、とんでもないことを考えるな。
勢いでアイリ様と、こ、こ、恋人になったものの、貴族であるアイリ様と正式な関係になれるなんて思っていなかった。
アイリ様がどこかの貴族に嫁いでいくのを見守るしかないと思っていた。
それがまさか結婚できるなんて!
そのための準備として、傷が治ってくると、勉学、マナーの先生がついて、貴族の基本知識、口調、立ち振る舞い、ダンスなど叩き込まれた。
微笑みも練習させられた。
なかなか顔の筋肉が動かなかったけど、アイリ様のことを思えば、顔がかすかに緩む。
頑張って、及第点をもらえるようになった。
そうして俺が特訓している間に、拘束した者たちの尋問が進み、やはり隣国の特殊部隊だったことが判明した。
詳しいことは聞かされていないが、国境の山脈のこちら側に魔石の広大な鉱脈が見つかったようで、それを狙ってのことだった。
すでにひそかに発掘が進められていたようだ。
アイリ様の魅了も発端は隣国の魔術師だった。
たまたま、昔、ラウーヤ男爵と取引があって、屋敷を訪れた魔術師がアイリ様を見て、魅了の資質に気づいた。そして、いたずら心で、アイリ様に魅了がダダ漏れになってしまう魔術を施した。
(なんて迷惑な!)
そのせいで何年もアイリ様は迷惑を被ったのに。
俺は憤った。
でも、考えたら、そのおかげで俺はアイリ様のおそばにいられたわけだが。
何年もしてそれを思い出した魔術師が、その魅了を利用すれば、自分たちの呪いでこの国を操れると思い、今回の計画を思いついたらしい。
操られていなければ、陛下も王太子も優秀で、隣国に猛抗議し、高い賠償金と魔石採掘の手数料をせしめたようだ。魔石は新たな貿易資源として、国庫を潤すことになるのだろう。
アイリ様が戻る前に、すべてのトラブルが片づいていた。
待ちに待ったアイリ様が戻ってくるという日、朝から落ち着かず、なんなら王都に入る門まで迎えに行きたいと思っていたら、エブリア嬢に止められた。
俺のことはサプライズにしたいそうだ。
(俺が真っ先に出迎えたかったのに……)
しぶしぶ豪華な服に着替え、出番を待つ。
こんな服を着ると、本当に貴族になるのかと不思議な気分だ。
広間で待っていると、護衛に案内されてアイリ様が入ってきた。
そのお姿の美しいこと!
花ひらくようなドレスで、アイリ様自体が美しく咲き誇る薔薇のようだった。
アイリ様は俺に気づかず、不安そうにされていた。
駆け寄って、安心させたい。
そんな気持ちをぐっと堪え、俺は自分の役割を果たした。
目が覚めて、置いていかれたことを知り、悲しみに暮れた。
(常にアイリ様のおそばにいて、お守りしたかったのに)
しかも、お戻りは数カ月後だという。
今からでも追いかけられないかなんて思っていたとき、エブリア嬢が見舞いにきてくれ、計画を聞かせてくれた。
なんと俺を貴族にして、アイリ様との結婚資格を得るようにしてくれるとのことだった。
(孤児の俺が、一代とはいえ、貴族?)
有り難いけれど、とんでもないことを考えるな。
勢いでアイリ様と、こ、こ、恋人になったものの、貴族であるアイリ様と正式な関係になれるなんて思っていなかった。
アイリ様がどこかの貴族に嫁いでいくのを見守るしかないと思っていた。
それがまさか結婚できるなんて!
そのための準備として、傷が治ってくると、勉学、マナーの先生がついて、貴族の基本知識、口調、立ち振る舞い、ダンスなど叩き込まれた。
微笑みも練習させられた。
なかなか顔の筋肉が動かなかったけど、アイリ様のことを思えば、顔がかすかに緩む。
頑張って、及第点をもらえるようになった。
そうして俺が特訓している間に、拘束した者たちの尋問が進み、やはり隣国の特殊部隊だったことが判明した。
詳しいことは聞かされていないが、国境の山脈のこちら側に魔石の広大な鉱脈が見つかったようで、それを狙ってのことだった。
すでにひそかに発掘が進められていたようだ。
アイリ様の魅了も発端は隣国の魔術師だった。
たまたま、昔、ラウーヤ男爵と取引があって、屋敷を訪れた魔術師がアイリ様を見て、魅了の資質に気づいた。そして、いたずら心で、アイリ様に魅了がダダ漏れになってしまう魔術を施した。
(なんて迷惑な!)
そのせいで何年もアイリ様は迷惑を被ったのに。
俺は憤った。
でも、考えたら、そのおかげで俺はアイリ様のおそばにいられたわけだが。
何年もしてそれを思い出した魔術師が、その魅了を利用すれば、自分たちの呪いでこの国を操れると思い、今回の計画を思いついたらしい。
操られていなければ、陛下も王太子も優秀で、隣国に猛抗議し、高い賠償金と魔石採掘の手数料をせしめたようだ。魔石は新たな貿易資源として、国庫を潤すことになるのだろう。
アイリ様が戻る前に、すべてのトラブルが片づいていた。
待ちに待ったアイリ様が戻ってくるという日、朝から落ち着かず、なんなら王都に入る門まで迎えに行きたいと思っていたら、エブリア嬢に止められた。
俺のことはサプライズにしたいそうだ。
(俺が真っ先に出迎えたかったのに……)
しぶしぶ豪華な服に着替え、出番を待つ。
こんな服を着ると、本当に貴族になるのかと不思議な気分だ。
広間で待っていると、護衛に案内されてアイリ様が入ってきた。
そのお姿の美しいこと!
花ひらくようなドレスで、アイリ様自体が美しく咲き誇る薔薇のようだった。
アイリ様は俺に気づかず、不安そうにされていた。
駆け寄って、安心させたい。
そんな気持ちをぐっと堪え、俺は自分の役割を果たした。