華夏の煌き
 機嫌の悪い申陽菜に八つ当たりされないように、宮女はすぐさま医局へ走り、医局長の陸慶明に助けを求めた。


52 思案
 軍師見習いの三人は、地図を広げこの中華を4つに分けた。中華を統一したこの曹王朝はそのままにして、残りの三国の君主となって中華統一を目指すシミュレーションを行うのだ。
 徐忠正は地道に国力を上げ、兵よりも農民を増やす。彼はそもそも南方の大富豪の息子なので、まず流通を活発にし経済を安定させることを大事にしている。

「商人が少ないんじゃ?」
 
 星羅が尋ねると「いや、売るものがないと商人ばっかりいてもしょうがないのさ」と物質の豊かさを説く。
 郭蒼樹は防衛に力を注ぐようだ。

「保守的すぎないか?」

 徐忠正にそう言われるが郭蒼樹はそれでいいらしい。彼は代々軍師を輩出している家柄だ。その彼に言わせると、勝負は時の運らしく余裕があって攻めても駄目になることがあるので、まずは守りを、ということだった。

「星雷はどうする?」
「うーん……」

 星羅はまだ方針らしいものが確立されていなかった。

「ちょっと情報収集しながら様子見かな」
「まあ、それもありだ」

 柔軟性のある態度も、必要であると3人の意見は案外そろう。考え方も個性も違うが、徐忠正も郭蒼樹も他人の思考に偏見がなく、否定することがなかった。少しでもみんなと違うと排除しようとする人たちに比べ、寛容だが芯のある二人を星羅は好きになっていった。

 思考を鍛えながら、3人は献策について考える。気のいい徐忠正は提案をする。

「なあ、3人で一緒に3つ考えないか?」
「一緒にだと?」
「ああ、禁じられてはないだろう?」
「確かに、一人ひとりで考えろとは言われていないね」
「どうだ?」

 星羅は「いいと思う」と賛成するが、郭蒼樹は少し考えている。

「それだとここから追い出されることはないだろうが、自分の実力が測りかねるな……」

 知力においてプライドの高い彼らしい考えだった。軍師省に無難に残っていくよりも、自分の能力を確かめたい気持ちに星羅も同意する。

「確かに、平均的な3人でいるよりも、この中で一人でも突出したものが軍師になっていくほうが国のためにはなるね」
「そっか。まあそりゃそうだわな」

 星羅も提案する。

「お互いで考えた献策を最後みんなで考察しあうのってどう?」
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