華夏の煌き
「ああ、それはいいな」
「うん、それなら自分の能力も測れるし、策の精度も上がろう」
「じゃ、策はしばらく内緒ね」

 3人は献策についてしばらく触れずに、また学習に戻ることにした。

 献策について考えながら歩いていると、馬の優々のまえを通り過ぎてしまった。

「星雷さん、どこ行くだ? おめえさまの馬はそっちだぞ」
「あ、仲典さん、うっかりしてたよ」

 気のいい許仲典はにこにこと馬の世話をしている。馬たちも彼によく懐いているらしく、そばに来るとふんふん鼻を鳴らし顔を摺り寄せる。

「こらこら、くすぐったいだよ」
「ふふ、仲典さんは馬に好かれているな」
「まったく、おなごにはあまり好かれないのに」

 ふくれっ面をするが愛嬌がある許仲典に「仲典さんのように、優しければよい奥方がきますよ」と星羅は本心から告げる。

「そうかあ? 星雷さんも、おらのとこに来てもいいと思うかね?」
「え?」

 虚を突かれたように許仲典を見つめると、彼も不思議そうな顔をする。

「星雷さんは、おなごだべ?」
「あ、ああ、そうだ。知ってたのか」
「そりゃあ、一目見たらわかるさ」
「別に隠してるわけじゃないけど、みんなには内緒にしてもらえないか? ここは男ばかりだからさ」
「ん? いいよ。おら、星雷さんくらいしかおしゃべりする人いないし」

 ほっとして星羅は「仲典さんは鋭い観察眼も持ってるな」と感心した。ほめられて気をよくした許仲典は「それほどでもないって」と頭をかく。

「あ、そうだ。財務省の袁幸平には気を付けたほうがいいだ。とにかく女好きだ。星雷さんが目をつけられたらやっかいだ」
「財務省の袁幸平? まあお目にかかることはないと思うが、気を付けるよ。ありがとう」

 安心した顔を見せる許仲典に別れを告げ、星羅は馬の優々とともに厩舎を後にした。色々な機関が入っている金虎台の門を出てから星羅は優々にまたがる。

「仲典さんのおかげで艶が出てるね」

 優々に話しかけるとヒヒィン!と嬉しそうに啼く。

「さて帰ろう」

 好きな学問と考察に明け暮れる毎日はとても充実している。少し遠回りをして地平線が望めるところに出る。

「この広い国の外にもいっぱい国があるのね」

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