華夏の煌き
7 立太子
王である曹孔景は、長子である隆明を太子に立てることを決め、その儀式を執り行う日を定めるべく陳賢路を呼びつける。陳賢路はすでに吉日を用意して王に謁見する。王に三回拝礼すると「面を上げよ」と声がかかった。
「どうだ。よい日は」
「大王、こちらをご覧ください」
恭しく書状を差し出すと、側仕えの文官が受け取り、孔景に献上した。孔景は巻かれた紙をさっと広げ右から左へ目を通す。
「実はこの日は王后の誕生日なのだ」
どうにかならないものかと、孔景は目で陳賢路に合図をおくる。現在の王后は気が強く、長子の隆明の立太子に反対することはもちろんないが、自分がないがしろにされたと思えば、機嫌は悪くなるだろう。孔景は先祖代々の教えを受け継ぎ、安定した治世を行っている。王后の機嫌や気分などで、朝廷が不安定になることは避けねばならない。
実際にどんなに良い治世であっても、王の死後、王后とその親戚などによって王朝が傾くことが多々ある。現在のこの王朝はその歴史から学び、後宮における王の妃は多くても5名までである。それ以上の数を置いても、維持費や後継ぎ、寵愛の有無など、問題が増えるばかりになる。先の王后が亡くなったので、年功序列で今の王后が繰り上がったのだ。
袖の中から別の書状をとりだし「では、こちらを」と陳賢路は差し出す。このようなこともあろうかと、吉日は複数選んであった。
「好い! この日に儀式を行う」
「ははぁ」
孔景は満足し、ほっとした表情を見せていた。
「では、下がってよい。次の手筈も頼むぞ」
「御意にございます」
陳賢路は丁重に拝礼をして朝廷を後にした。石の階段を、足を踏み外さないようにゆっくり降りていると、太子となる王子の隆明が目に入る。立派な青年となり、王はもとより臣下からの太子への呼び声は高かった。
「博行さまも立派ではあるが、隆明さましかおるまい」
博行も隆明に劣らず、文武両道で美丈夫であるが、身弱であった。剣の腕に優れているが、長く鍛錬すると微熱を伴い床に臥すことも多かった。最近は、医局のホープ、慶明が献上している、強心剤のおかげで安定した健康を保っている。
王である曹孔景は、長子である隆明を太子に立てることを決め、その儀式を執り行う日を定めるべく陳賢路を呼びつける。陳賢路はすでに吉日を用意して王に謁見する。王に三回拝礼すると「面を上げよ」と声がかかった。
「どうだ。よい日は」
「大王、こちらをご覧ください」
恭しく書状を差し出すと、側仕えの文官が受け取り、孔景に献上した。孔景は巻かれた紙をさっと広げ右から左へ目を通す。
「実はこの日は王后の誕生日なのだ」
どうにかならないものかと、孔景は目で陳賢路に合図をおくる。現在の王后は気が強く、長子の隆明の立太子に反対することはもちろんないが、自分がないがしろにされたと思えば、機嫌は悪くなるだろう。孔景は先祖代々の教えを受け継ぎ、安定した治世を行っている。王后の機嫌や気分などで、朝廷が不安定になることは避けねばならない。
実際にどんなに良い治世であっても、王の死後、王后とその親戚などによって王朝が傾くことが多々ある。現在のこの王朝はその歴史から学び、後宮における王の妃は多くても5名までである。それ以上の数を置いても、維持費や後継ぎ、寵愛の有無など、問題が増えるばかりになる。先の王后が亡くなったので、年功序列で今の王后が繰り上がったのだ。
袖の中から別の書状をとりだし「では、こちらを」と陳賢路は差し出す。このようなこともあろうかと、吉日は複数選んであった。
「好い! この日に儀式を行う」
「ははぁ」
孔景は満足し、ほっとした表情を見せていた。
「では、下がってよい。次の手筈も頼むぞ」
「御意にございます」
陳賢路は丁重に拝礼をして朝廷を後にした。石の階段を、足を踏み外さないようにゆっくり降りていると、太子となる王子の隆明が目に入る。立派な青年となり、王はもとより臣下からの太子への呼び声は高かった。
「博行さまも立派ではあるが、隆明さましかおるまい」
博行も隆明に劣らず、文武両道で美丈夫であるが、身弱であった。剣の腕に優れているが、長く鍛錬すると微熱を伴い床に臥すことも多かった。最近は、医局のホープ、慶明が献上している、強心剤のおかげで安定した健康を保っている。