華夏の煌き
布の隙間からは、彰浩の浅黒い手が見える。実の父ではないと言え、彼は星羅を慈しんでくれた。じっと彼の手を見ていると、肌にはもう艶はなく目立たないがシミがあることに気づく。スキンシップの多い京湖と違い、彰浩とはそれほど抱き合ったことはないが、よく手を引いてもらったことを思い出す。浅黒い肌に薄桃色の長い爪甲。角ばった大きな手は優しい陶器を生み出し、小さな星羅の手を包み込んでくれた。
「とうさま……」
会えなくなるわけでないのに、星羅は寂しい気持ちでいっぱいになる。星羅のつぶやきが聞こえたのか彰浩もぽつりとつぶやいた。
「もう家に帰ってもいないのだな……」
今まで聞いたことのない寂しそうで弱気な声を星羅は聞いた。思わず歩みを止めて、強く彰浩の手を握った。
「もっともっと幸せに……」
わずかに力がこもった後、ふっと彰浩は力を抜き、すうっと星羅の手を上げる。星羅の指先にふわっと触れる別の人物の指先を感じた。
「大事にします」
明樹だった。彰浩の手は離され、星羅の手は明樹の手の上に乗せられる。その手は大きく温かかった。
「よろしくお願いいたします」
そう言って彰浩は後ろに下がる。思わず振り向きそうになった星羅の身体を、明樹がしっかりと支え「行こう」と歩き出す。
星羅のエスコートが彰浩から明樹に変わると、歓声がまた激しくなった。大きな銅鑼の音が響き、笛の音や太鼓や鐘の音が鳴り響く。周囲が見えないだろう星羅に「ゆっくりでいいから、気を付けて」と時々明樹からのいたわりの声がかけられる。
しばらく歩き階段をあがる。慣れているはずの陸家だが、今日は違う屋敷に来ているようだ。明樹の歩みが止まる。
「着いたよ」
「はい」
2人は跪き、目の前にいる陸慶明と妻の絹枝に挨拶をする。これから夫婦として支えあい、慶明と絹枝に実の親のように仕えると星羅は宣言し、そして退出した。客たちはそのまま宴会が始まり、にぎわっている。
星羅は明樹に手を引かれ、夫婦の部屋へと入った。寝台に腰かけた星羅の顔にかかる紅蓋頭を明樹はそっと取る。
「星羅……」
「明兄さま?」
ぼんやりとする明樹に星羅は首をかしげる。
「いや、あの、ちょっと驚いた」
「何をです?」
「こんなに美しいとは思ってなかった」
「えっ」
「とうさま……」
会えなくなるわけでないのに、星羅は寂しい気持ちでいっぱいになる。星羅のつぶやきが聞こえたのか彰浩もぽつりとつぶやいた。
「もう家に帰ってもいないのだな……」
今まで聞いたことのない寂しそうで弱気な声を星羅は聞いた。思わず歩みを止めて、強く彰浩の手を握った。
「もっともっと幸せに……」
わずかに力がこもった後、ふっと彰浩は力を抜き、すうっと星羅の手を上げる。星羅の指先にふわっと触れる別の人物の指先を感じた。
「大事にします」
明樹だった。彰浩の手は離され、星羅の手は明樹の手の上に乗せられる。その手は大きく温かかった。
「よろしくお願いいたします」
そう言って彰浩は後ろに下がる。思わず振り向きそうになった星羅の身体を、明樹がしっかりと支え「行こう」と歩き出す。
星羅のエスコートが彰浩から明樹に変わると、歓声がまた激しくなった。大きな銅鑼の音が響き、笛の音や太鼓や鐘の音が鳴り響く。周囲が見えないだろう星羅に「ゆっくりでいいから、気を付けて」と時々明樹からのいたわりの声がかけられる。
しばらく歩き階段をあがる。慣れているはずの陸家だが、今日は違う屋敷に来ているようだ。明樹の歩みが止まる。
「着いたよ」
「はい」
2人は跪き、目の前にいる陸慶明と妻の絹枝に挨拶をする。これから夫婦として支えあい、慶明と絹枝に実の親のように仕えると星羅は宣言し、そして退出した。客たちはそのまま宴会が始まり、にぎわっている。
星羅は明樹に手を引かれ、夫婦の部屋へと入った。寝台に腰かけた星羅の顔にかかる紅蓋頭を明樹はそっと取る。
「星羅……」
「明兄さま?」
ぼんやりとする明樹に星羅は首をかしげる。
「いや、あの、ちょっと驚いた」
「何をです?」
「こんなに美しいとは思ってなかった」
「えっ」