華夏の煌き
「ああここから都が一望できる」
都の地図で、全体像を把握していたが、リアルな全体像はまた格別の感動がある。そして都よりももっと遠くの空を見つめる。夫、陸明樹の赴任地のほうを見る。隣は西国、そして広大な砂漠を越えると浪漫国があるのだ。
「さあ、中に入るぞ」
「あ、うん」
徳樹はいつの間にかすやすやと寝息を立てていた。
「さすが、大物だな」
郭蒼樹は一段と優しい目で徳樹を見てから皆の後をついていく。その姿を柳紅美は忌々しそうに睨みつけていた。
83 血脈
代々軍師として仕えている郭家が、王、曹隆明のもとに祝辞を述べにやってきた。郭家は王家と婚姻を結ぶことなく、常に軍師を輩出し続け、こうして何代も繋がってきているので、ある意味外戚のようだった。この一族が私利私欲に走る輩であれば、この曹王朝は倒れていたかもしれない。
郭家は王家とも違う高いプライドを持つ家柄だ。この王朝を築いた高祖の志を受け継いでいるかのようである。軍師試験で郭家を優遇することは断じてない。どの世代にも一人は確実に軍師を輩出しているのは、そういう血統なのだろう。
ただし郭家にも保険のようなものがあるようだ。多く子を作り軍師になれる確立を上げている。とはいうものの下手な鍛冶屋も一度は名剣ではなく、元々のベースが違うのだろう。最難関の軍師試験はそうそうパスできない。
外戚のような関係であっても馴合うことはしない。権力にも富にも欲がなく、ただ最上策を練り上げることだけに専念するエキスパートだ。そのおかげで他の高官たちは郭家に一目を置いているが、特殊すぎるせいでやっかみの対象にもならなかった。
郭家の長である郭蒼樹の父、郭嘉益が長々と寿詞を読み上げる。普段、挨拶すらしない一家だがこういった形式はきちんとこなす。隆明はじっと聞き入り、終ると宴席に促す。王族と名家の宴会だが質素だ。お互いに迎合することのない関りで、質実剛健を旨とする王家と郭家には華美なものは必要なかった。派手な舞や劇もなく、音楽もなく上等な酒を酌み交わすくらいだ。
隆明は末席に星羅を見止める。またその腕に抱かれた赤子にも気づく。今すぐにでも席を立ち、星羅のもとへ行き赤子を抱きたいと思った。しかし思うだけで隆明は動かなかった。
「若かったのだな……」
「何かおっしゃいました?」
都の地図で、全体像を把握していたが、リアルな全体像はまた格別の感動がある。そして都よりももっと遠くの空を見つめる。夫、陸明樹の赴任地のほうを見る。隣は西国、そして広大な砂漠を越えると浪漫国があるのだ。
「さあ、中に入るぞ」
「あ、うん」
徳樹はいつの間にかすやすやと寝息を立てていた。
「さすが、大物だな」
郭蒼樹は一段と優しい目で徳樹を見てから皆の後をついていく。その姿を柳紅美は忌々しそうに睨みつけていた。
83 血脈
代々軍師として仕えている郭家が、王、曹隆明のもとに祝辞を述べにやってきた。郭家は王家と婚姻を結ぶことなく、常に軍師を輩出し続け、こうして何代も繋がってきているので、ある意味外戚のようだった。この一族が私利私欲に走る輩であれば、この曹王朝は倒れていたかもしれない。
郭家は王家とも違う高いプライドを持つ家柄だ。この王朝を築いた高祖の志を受け継いでいるかのようである。軍師試験で郭家を優遇することは断じてない。どの世代にも一人は確実に軍師を輩出しているのは、そういう血統なのだろう。
ただし郭家にも保険のようなものがあるようだ。多く子を作り軍師になれる確立を上げている。とはいうものの下手な鍛冶屋も一度は名剣ではなく、元々のベースが違うのだろう。最難関の軍師試験はそうそうパスできない。
外戚のような関係であっても馴合うことはしない。権力にも富にも欲がなく、ただ最上策を練り上げることだけに専念するエキスパートだ。そのおかげで他の高官たちは郭家に一目を置いているが、特殊すぎるせいでやっかみの対象にもならなかった。
郭家の長である郭蒼樹の父、郭嘉益が長々と寿詞を読み上げる。普段、挨拶すらしない一家だがこういった形式はきちんとこなす。隆明はじっと聞き入り、終ると宴席に促す。王族と名家の宴会だが質素だ。お互いに迎合することのない関りで、質実剛健を旨とする王家と郭家には華美なものは必要なかった。派手な舞や劇もなく、音楽もなく上等な酒を酌み交わすくらいだ。
隆明は末席に星羅を見止める。またその腕に抱かれた赤子にも気づく。今すぐにでも席を立ち、星羅のもとへ行き赤子を抱きたいと思った。しかし思うだけで隆明は動かなかった。
「若かったのだな……」
「何かおっしゃいました?」