華夏の煌き
 星羅と隆明はやはり只ならぬ関係なのだと申陽菜はみなす。やはり星羅と徳樹を無視することはできないと一人部屋に戻り抹殺の計画を練り始めた。


84 国難
 数年のうちに国難にみまわれるという太極府の予言によって、国はもちろん、州、郡、県にも備蓄を増やしておくようにと発布してあった。備蓄と倹約を始めて数年経過すると、もう国難はないのではないかと国民を気を緩め始める。ちょうどそのころ強い冷夏にみまわれた。
更に例年に比べ雨量も多い。暑い夏をいつもより快適に過ごせると喜びもつかの間、作物に大いに影響が現れる。伸びきらない作物に加え、じっとりとした雨に根腐り始める野菜。家畜の成育も悪く、妊娠率も低下している。

「この飢饉のことだろうかのう」

 星空を見ながら、太極府長の陳賢路はつぶやく。空には凶星が赤黒く瞬いている。

「これは一つの原因だと思います。今の国家でこの状況に乗じて政変を起こす者はおりません」

 同じく星空を見つめたまま、朱京樹は答える。

「ふむ……。危機的な状況がどれぐらい続くか見通しは立てられるかね?」
「おそらく3年は」

 都から南の地方はまだ良いが、北部は飢餓に苦しむことになる。国の穀物倉庫である『氷井台』には十分に備えがあるが、まかなえるのは都に住む人々ぐらいで、ほかの州まで面倒見ることは厳しい。しかし飢饉がひどくなれば、北部から都へ避難民が南下してくるだろう。


 飢饉対策のためにいきなり各省は多忙を極める。軍師省でも、見習いから大軍師まで一堂に集まり策を練っている。

「今回の国難には耐えることが基本だが、状況によっては人道を外すことがある。国難に付け入る国もあるだろうから大国に援助は申出ないほうがいいだろう」
 
 次期、大軍師と言われている郭蒼樹の父である郭嘉益が厳かに発言する。大軍師である、馬秀永は白く長いひげを撫でながら頷き聞いている。

 現在の軍師省には上から下まで合わせて、7名所属している。大軍師の馬秀永を筆頭に、軍師の郭嘉益、教官の孫公弘、助手の郭蒼樹と朱星羅、そして新たに試験に合格した助手見習いになる柳紅美と郭文立だ。柳紅美は郭蒼樹の従妹で、郭文立は郭蒼樹の弟になる。星羅は改めて、郭家は軍師の家系なのだと感心する。

「まだ飢饉が他国に知れ渡らぬうちにもっと食物を輸入しておくべきでしょう」

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