華夏の煌き
 郭蒼樹の発言に、星羅も同意し、さらに付け加える。

「西国にもまだ国難は知られていません。今のうちに華夏国の絹織物を香辛料に変え、もっと北部の大蒙古国から寒さに耐える種芋を譲ってもらったほうが良いと思います」

 星羅の発言に、柳紅美が口を挟む。

「種芋はわかるけど、香辛料なんかどうするの? 腹の足しにならないわよ」
「あ、それは、その……」
「紅美、途中で口を挟むな」

 郭蒼樹に制され、柳紅美はつんと横を向く。大軍師の馬秀永がほほっと笑う。

「よいよい。軍師省のものは家族も同然。黙って考えるのも良いが、複数の人間が集まって発言すれば、もっと大きなところから新たに想像がなされるのでな。さて星雷、続きを述べよ」

 星羅は一呼吸おいて説明する。

「確かに香辛料には腹を膨らせることはできません。しかし様々な薬効があり、心身ともに良い影響がでるのです」
「薬効? どこの情報?」

 柳紅美は厳しく突っ込んでくる。

「わたしは両親が西国人なので香辛料の効果は身をもって感じてますし、医局長も香辛料を定期的にとることで免疫などが上がるとおっしゃってました」
「ほうほう。医局長殿のお墨付きか」

 これから飢饉によって、餓死者が出るのは必然になり、国は葬式で溢れ返すだろう。身体は生きていても、心が死んでしまうかもしれない。星羅は国民が国難によって、生きる気力がなくなってしまうことを恐れた。困難がやってきても、あきらめず前向きな気力があれば乗り越えられると信じている。

「西国に食物を望むときっと国難に付け入ります。しかし西国とて、わが国の絹織物や銀は欲しいはずです。香辛料との引き換えであれば、内情を探られずに済むと思います」

 郭蒼樹も星羅を推して発言する。しばらく活発な会議が行われたのち、まとめてから今日は解散となった。

 今日も疲れたと履物を履いていると「星雷」と郭蒼樹から声を掛けられた。

「どうだ。酒屋にでも寄らないか? 疲れただろう」
「ふふっ。ありがとう。でもいい。徳樹が待ってるし、あの子の顔を見るのが一番元気になるのよ」
「そうか。なんだか、すまなかったな」
「なにが?」
「紅美だ」
「ああ、気にしてないから。突っ込みがあるともっと考えなければって頭を働かせるようになるしね」
「そうか。じゃあ、また。よく休めよ」
「蒼樹もね」

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