華夏の煌き
 朱京湖ことラージハニは数日の旅の末、王に拝謁することになった。兵士に囲まれて王宮にはいり、王に拝謁する。跪き下を向いていたラージハニに「顔をあげよ」と声がかかる。
 王の顔を見てラージハニは驚いた。

「あ、あなたは!?」
「そうだ。私はいまや王なのだ」

 大臣の息子であったはずのバダサンプが王位についている。いつの間に王位を簒奪したのだろうか。

「王には世継ぎができなかったのだ。それで私が王位につくことになったのだよ」

 政権交代が穏やかに行われたはずはなかった、秘密裏に高官が何人も抹殺されているはずだ。考えられないほど、卑劣なやり方で王位についたであろうことは想像がつく。華夏国にいた時ですら、西国はどんどん税が重くなっていき庶民、それ以下の奴隷が苦しんでいる噂は聞いていた。

「さて、そなたは私の妃となる。喜べ」
「なっ!」

 立ち上がろうとしたラージハニを二人の兵士が抑えた。

「よいよい。すぐに婚礼を上げよう。支度をさせよ」

 ラージハニは引きずられるように兵士に連れていかれ、花嫁の支度をされることになった。

 沐浴のためにラージハニは兵士から、王宮に仕えている侍女たちに引き渡される。石でできた浴槽に水が張られ香り高い花びらが散らさせている。侍女たちに衣を脱がされ、手を引かれ水につかる。特に何もすることなく浸かっていると、また侍女たちに手を取られ浴槽から出される。身体を柔らかい布で拭きあげられるままじっとしていると「こちらは何でしょうか?」とラージハニの胸元を見る。首から小瓶がぶら下がっている。

「これは、美肌を保つ水よ。沐浴の後に肌に塗るものなの」
「あの、失礼ですが、中身を確かめさせていただいて宜しいでしょうか?」
「あら、怪しいかしら?」
「その、一応確認しないと……」

 木の蓋をとり瓶の中身を手のひらにとろりと出す。

「ほら。なめてみましょうか?」

 ラージハニはぺろりと舐めた後、全身に塗り始める。すっかり中身を出してしまい首筋から胸元、腰から足首まで身体中に塗る姿に侍女たちは大丈夫だろう判断しそのままにした。

「では、こちらを」

 今度は真紅の衣装を身に着ける。婚礼衣装のようで豪華さが増している。

「美しいですわ!」

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