華夏の煌き
ひとしきり涙を流した後「どうしてこんなことに?」と星羅は慶明に顔を向ける。明樹の父である慶明も、深い悲しみを感じさせる目の色だった。絹枝と貴晶に目をやって戻し「こちらで話そう」と星羅を広間から外に出す。
広間から少し離れた東屋に座り、星羅は説明を待つ。
「明樹は心臓が破裂したのだ……」
「え、心臓、が?」
こくっと頷き慶明は続きを話す。星羅は黙って口を挟むことなく最後まで聞いた。
――明樹は西国での快楽を忘れられず、下女と催淫剤を使って快楽に耽っていた。しかも催淫剤だけでは飽き足らず精力剤や精神を高揚させる薬品にまで手を伸ばす。複数の薬品を、明樹は酒とともに服用していた。薬品のおかげか、健康そのものに見えた明樹を、慶明は回復したものとしてそれ以上追求することがなかった。
昼間に慶明と絹枝がいない間、存分に快楽に耽った明樹は機嫌よく、夕げ時に顔を合わせると健やかそのものだった。
複数の薬品によるエクスタシーのしわ寄せがある日やってくる。健康に見えたのは表面だけで、中身はもうボロボロになっていた。あちこちの臓器はフル稼働していたらしく、とうとう心臓が異常な速さで鼓動を打ち張り裂けた。
慶明は泣きながら聞いている星羅に「すまなかった。気づいてやれなかったのだ」と力なくつぶやいた。明樹の相手になっていた下女の小桜も、同様の症状で死に絶えた。星羅の気持ちを考えると、腹上死で二人とも逝ったとは言えなかった。更に手を硬くつなぎあっていた二人を無理やり引き離したことも一生告げるつもりはない。
ぼんやりと空中を眺める星羅にそれ以上何も話さず、慶明もじっと座っていた。いつの間にか日が落ち夕暮になり、星が輝き始めたが、星羅は気づくことがなかった。
97 冷宮
冷害による飢饉の影響は華夏国をじわじわと脅かす。都では備蓄と治安の良さでなんとか耐えているが、地方に行けば行くほど、殺伐としている。地方の暴動を抑えるために、都から軍を派遣すればそれだけ国の体力は奪われる。飢饉が収まるまで、中央への税を廃止し、北東部の県令が、配給を私物化したために即、極刑に処されたことを素早く伝達することで治安が保たれている。
広間から少し離れた東屋に座り、星羅は説明を待つ。
「明樹は心臓が破裂したのだ……」
「え、心臓、が?」
こくっと頷き慶明は続きを話す。星羅は黙って口を挟むことなく最後まで聞いた。
――明樹は西国での快楽を忘れられず、下女と催淫剤を使って快楽に耽っていた。しかも催淫剤だけでは飽き足らず精力剤や精神を高揚させる薬品にまで手を伸ばす。複数の薬品を、明樹は酒とともに服用していた。薬品のおかげか、健康そのものに見えた明樹を、慶明は回復したものとしてそれ以上追求することがなかった。
昼間に慶明と絹枝がいない間、存分に快楽に耽った明樹は機嫌よく、夕げ時に顔を合わせると健やかそのものだった。
複数の薬品によるエクスタシーのしわ寄せがある日やってくる。健康に見えたのは表面だけで、中身はもうボロボロになっていた。あちこちの臓器はフル稼働していたらしく、とうとう心臓が異常な速さで鼓動を打ち張り裂けた。
慶明は泣きながら聞いている星羅に「すまなかった。気づいてやれなかったのだ」と力なくつぶやいた。明樹の相手になっていた下女の小桜も、同様の症状で死に絶えた。星羅の気持ちを考えると、腹上死で二人とも逝ったとは言えなかった。更に手を硬くつなぎあっていた二人を無理やり引き離したことも一生告げるつもりはない。
ぼんやりと空中を眺める星羅にそれ以上何も話さず、慶明もじっと座っていた。いつの間にか日が落ち夕暮になり、星が輝き始めたが、星羅は気づくことがなかった。
97 冷宮
冷害による飢饉の影響は華夏国をじわじわと脅かす。都では備蓄と治安の良さでなんとか耐えているが、地方に行けば行くほど、殺伐としている。地方の暴動を抑えるために、都から軍を派遣すればそれだけ国の体力は奪われる。飢饉が収まるまで、中央への税を廃止し、北東部の県令が、配給を私物化したために即、極刑に処されたことを素早く伝達することで治安が保たれている。