華夏の煌き
徳樹は母親から離れたくないと思って側にいるふうではなかった。まだ幼い彼は、軍師省で議論や策が練られているそばでじっと話を聞き、うとうと眠り、腹が減った時だけ星羅を呼ぶ。殺伐とした軍師省で徳樹は軍師たちに安らぎを与える存在のようであった。
「まこと、天子というものは徳樹殿のようですわね。陛下によく似ておいでで」
王妃の桃華が優しく隆明に話しかける。
「天子、か」
「あの、陛下。徳樹殿を王太子としてお迎えできませぬか? 杏華公主の子として」
「ふ、む」
桃華の提案に、脈診を行っている慶明の脈が速くなってきた。慶明は桃華と同様に、ずっと以前から自分の孫を王太子にとひっそり望んでいたのだ。
「できませぬか?」
「できぬこともない。しかし色々手筈を整えねばならぬ。本来なら生まれるはずのない子なのでな……」
陰りのある隆明の表情を見て、桃華も苦しくなる。
「わたしのせいで……」
「そなたに罪はない」
慶明は、桃華が男児を産めなかったことを苦しんでいるのだと思っていたが、桃華は自分が選ばれていない妃であることを話していた。冷宮に送られた姉が王家に嫁いでいればきっと男児が生まれただろうと思っている。
「どうでしょう。本当は杏華公主が男児をお生みになっていたが、母子ともに療養中であったため公表できなかったことにすれば」
「まあ!」
「ほう」
慶明の提案に、隆明と桃華は顔を明るくする。
「あ、しかし星羅殿が承知するのかしら。杏華はきっと子供を喜んで慈しむと思うわ」
「こちらの都合だけで話してしまったが、星羅に話してみないとな。慶明頼めるか?」
「ええ。きっと星羅も良い話だと思うでしょう」
慶明は早速、今夜にでも星羅に話そうと話の手順を考えた。それと同時に、徳樹の立太子を邪魔する人物をどうにかしなければと考え始めている。
慶明が去ったあと、隆明と桃華は二人で庭に出た。手入れは良くされているが、気候が寒冷化され花は咲かなくなっている。
「また温かくなったらそなたの好きな花でも植えようか。好きな花はあるか?」
桃華はこうして隆明を一緒に歩くことが出来、心に花が咲き乱れるような気持だった。
「春に咲く花ならなんでも好きですわ」
「そうか。もっと他にも好きなものを聞かせておくれ」
「ええ」
「まこと、天子というものは徳樹殿のようですわね。陛下によく似ておいでで」
王妃の桃華が優しく隆明に話しかける。
「天子、か」
「あの、陛下。徳樹殿を王太子としてお迎えできませぬか? 杏華公主の子として」
「ふ、む」
桃華の提案に、脈診を行っている慶明の脈が速くなってきた。慶明は桃華と同様に、ずっと以前から自分の孫を王太子にとひっそり望んでいたのだ。
「できませぬか?」
「できぬこともない。しかし色々手筈を整えねばならぬ。本来なら生まれるはずのない子なのでな……」
陰りのある隆明の表情を見て、桃華も苦しくなる。
「わたしのせいで……」
「そなたに罪はない」
慶明は、桃華が男児を産めなかったことを苦しんでいるのだと思っていたが、桃華は自分が選ばれていない妃であることを話していた。冷宮に送られた姉が王家に嫁いでいればきっと男児が生まれただろうと思っている。
「どうでしょう。本当は杏華公主が男児をお生みになっていたが、母子ともに療養中であったため公表できなかったことにすれば」
「まあ!」
「ほう」
慶明の提案に、隆明と桃華は顔を明るくする。
「あ、しかし星羅殿が承知するのかしら。杏華はきっと子供を喜んで慈しむと思うわ」
「こちらの都合だけで話してしまったが、星羅に話してみないとな。慶明頼めるか?」
「ええ。きっと星羅も良い話だと思うでしょう」
慶明は早速、今夜にでも星羅に話そうと話の手順を考えた。それと同時に、徳樹の立太子を邪魔する人物をどうにかしなければと考え始めている。
慶明が去ったあと、隆明と桃華は二人で庭に出た。手入れは良くされているが、気候が寒冷化され花は咲かなくなっている。
「また温かくなったらそなたの好きな花でも植えようか。好きな花はあるか?」
桃華はこうして隆明を一緒に歩くことが出来、心に花が咲き乱れるような気持だった。
「春に咲く花ならなんでも好きですわ」
「そうか。もっと他にも好きなものを聞かせておくれ」
「ええ」