華夏の煌き
「では、着替えてまいります」
「いやいや。今日はもうそのままで。その姿は凛々しくて良い」
「はあ」
「では輿にお乗りなさい」
女人とわかっても軍師省では男装をしている。柳紅美が入ってきてから、男装をやめようかと思ったがそのままにしていた。特に今は、夫の明樹を亡くし、柳紅美も去ったので、仕事中は男装でいることにしている。
狭い輿の中は、良い香りがして居心地がよく。袁幸平はちゃんと距離を保ち、不快感を与えることはない。むしろ仕事帰りで星羅のほうが汚れているのではないかと気を遣うほどだ。
「今日は、香千酒家に行きましょう。いろんな酒がありますよ。確か飲める口でしたね」
「ええ、少しだけ」
飢饉のため食物が乏しくなっているが、華夏国において何十年、何百年と寝かしている酒だけは豊富にあった。国民はわずかな酒の肴と酒で心と体を温めている。
香千酒家は、庶民の憩いの場でもある。袁幸平は少々場違いだ。最初に星羅を食事に誘ったとき、都で一番の高級食堂へ誘ったが断わられた。飢饉の際に贅沢などするべきではないし、率先して慎ましくあるべきだと主張された。袁幸平はその星羅の高潔な人柄に心惹かれる。ほかの女人を誘ったときは、ここぞとばかりにおいしいものが食べたいとねだられる。
柳紅美と許仲典の結婚式で、彼女は郭蒼樹と一緒に座っていた。その時の星羅は、清楚で可憐な少女のようであった。まるで未亡人に見えず、興味本位で近づく。周囲に、星羅のことを尋ねると軍師だという。軍師省に何度か訪れたことがあったが、どうやら男装している星羅を女人と気づかなかったらしい。伊達男と評判の高い自分が、星羅という女人に気付けなかったことに忌々しい思いと、身近にまったくいないタイプの彼女に強い関心を抱いた。
何度も断られ、やっとこうして親しく食事をすることが出来た。そろそろ、男女として親密になっても良いのではないかと隙をうかがっている。
店内に入ると、まばらだが酒を楽しんでいる男たちがいた。酒はいくらでも注文できるが、料理は一定の量を超えると、どんなに金を払っても出してもらえない。
「さあ、酒でも飲んで明るくやりましょう」
「はあ」
「いやいや。今日はもうそのままで。その姿は凛々しくて良い」
「はあ」
「では輿にお乗りなさい」
女人とわかっても軍師省では男装をしている。柳紅美が入ってきてから、男装をやめようかと思ったがそのままにしていた。特に今は、夫の明樹を亡くし、柳紅美も去ったので、仕事中は男装でいることにしている。
狭い輿の中は、良い香りがして居心地がよく。袁幸平はちゃんと距離を保ち、不快感を与えることはない。むしろ仕事帰りで星羅のほうが汚れているのではないかと気を遣うほどだ。
「今日は、香千酒家に行きましょう。いろんな酒がありますよ。確か飲める口でしたね」
「ええ、少しだけ」
飢饉のため食物が乏しくなっているが、華夏国において何十年、何百年と寝かしている酒だけは豊富にあった。国民はわずかな酒の肴と酒で心と体を温めている。
香千酒家は、庶民の憩いの場でもある。袁幸平は少々場違いだ。最初に星羅を食事に誘ったとき、都で一番の高級食堂へ誘ったが断わられた。飢饉の際に贅沢などするべきではないし、率先して慎ましくあるべきだと主張された。袁幸平はその星羅の高潔な人柄に心惹かれる。ほかの女人を誘ったときは、ここぞとばかりにおいしいものが食べたいとねだられる。
柳紅美と許仲典の結婚式で、彼女は郭蒼樹と一緒に座っていた。その時の星羅は、清楚で可憐な少女のようであった。まるで未亡人に見えず、興味本位で近づく。周囲に、星羅のことを尋ねると軍師だという。軍師省に何度か訪れたことがあったが、どうやら男装している星羅を女人と気づかなかったらしい。伊達男と評判の高い自分が、星羅という女人に気付けなかったことに忌々しい思いと、身近にまったくいないタイプの彼女に強い関心を抱いた。
何度も断られ、やっとこうして親しく食事をすることが出来た。そろそろ、男女として親密になっても良いのではないかと隙をうかがっている。
店内に入ると、まばらだが酒を楽しんでいる男たちがいた。酒はいくらでも注文できるが、料理は一定の量を超えると、どんなに金を払っても出してもらえない。
「さあ、酒でも飲んで明るくやりましょう」
「はあ」