華夏の煌き
 星羅は包みの中身をとりだす。紫色の綺麗な石だ。

「おお、これは。流雲石(ルーン)ではないか」

 先日占い師に観てもらったときにもらったと告げると、陳賢路は穏やかな表情を一変させ目を見開いた。

「なんと! その者は晶鈴かもしれない! この石はわしが晶鈴に渡した物によく似ておる」
「え?」
「そなたに会って名乗らなかったのか、その占い師は」
「ええ……」

 星羅は生みの母に会い損ねたのかと、目の前が真っ暗になった。ガクッとひざを折った星羅の肩に京樹が優しく手を置く。

「星羅、そんなに気を落としてはいけない」
「でも、でも」
「ついておいで。うちの卜者に占わせてみよう」

 陳賢路の後を星羅と京樹は黙って付いて行った。静かで暗い廊下をまた歩き、カチャカチャと音がする部屋に入る。陳賢路は算木を使うもの、振り子を使うもの、亀の甲羅を使うものに胡晶鈴の行方を占わせる。三者の鑑定結果を総合すると、都から北にある宿場町に彼女は滞在しているらしい。今日会えなければ、再び会う機会があるかどうか不明である。結果を聞くや否や星羅は立ち上がり「行ってくる!」と京樹と陳賢路に告げる。

「とにかく行っておいで、何かあればこちらで対応するから。軍師省にも言っておくよ」
「ありがとう。京にい」
「馬なら十分間に合うじゃろう」
「ありがとうございます」
「うんうん。礼は良いから早くいきなさい」
「では!」

 星羅は急ぎ自宅に戻り、馬の優々に跨った。

「行ってくるね。明々」
「ヒン」

 ロバの明々は眠そうな目をして軽く啼きまた目を閉じた。餌も水もたっぷりあるので大丈夫だろうことを確認して星羅は宿場町を目指した。

 都の門を抜け、北の宿場町まで一本道で迷うことはない。草木が枯れ殺伐としたかつての草原を駆け抜ける。途中で小川があったので優々に水を飲ませ、草を食べさせた。

「優々の食べる草がまだ生えていて良かったわ。人もあなたたちみたいにこんな草を食べられるといいわね」

 草食動物たちは、雑草と苔やシダなどでなんとか食いつないでいるところだった。しかしこの飢饉で、食用になってしまった農耕用の牛や馬も多い。少し休んだ優々はヒヒンッと啼き、星羅に出発できると合図する。

「平気? もういいの?」

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