華夏の煌き
 華夏国に落着きが見られ始めたと同時に、軍師省では危急存亡の際のマニュアルなどを作成始める。王の曹隆明も、隣国との交流し友好を深めるため、軍師たちを外交に赴かせることにする。また国際化に向けて、他国の言葉を学ぶ学校も増やし、より多彩で多種多様な職も生まれ始める。国全体が貧しくはなったが、個々の役割はより意識的になり、才を生かす機会に大いに恵まれるようになった。

 星羅は蒼樹と結婚してから、軍師省でも家でも一緒だった。四六時中一緒に居ても、お互いにやることが多いせいか干渉しあうことは少ない。蒼樹は結婚してからも変化がなく、星羅も変わる必要に迫られなかった。最初から家族だったような、もしくは長年連れ添った夫婦のような不思議な関係だった。しかし、そんな星羅にも思うところがあり、ついつい憎まれ口をたたく柳紅美のところへ会いに行く。

「会うたびにお腹が大きい気がするね」
「まあ、そうかも」

 紅美は4人目の子を妊娠していた。本当は3人目になるはずだったが、前回は双子を妊娠していた。

「あなたのところは兆候ないの?」
「あ、うん……」
「忙しすぎるんじゃない?」
「だといいけど……」
「まーた暗いわね。あなたってば、国や民のことには前向きなのに、自分のことになると途端にダメね」

 遠慮のない紅美は、女学生のころに得られなかった、もはや知己である。紅美のほうも学問も意識も他の女学生よりとびぬけていたので、対等に付き合えるのは星羅ぐらいだった。

「その、なかなか授からなくて」
「欲しいの? 子ども」
「わからない。でも出来ないとなんだか心配で」
「もしかして、自分に原因があるとでも思ってないわよね」
「え、どうだろう」
「原因があるなら蒼にいでしょうよ。あなたはもう産んでるんだし」
「う、ん……」
「気にしなくていいわよ。仲良すぎると子どもはいらないらしいじゃない。子どもが夫婦を繋ぎ止める役割をすることもあるみたいだし。あ、うちは仲いいわよ? 子どもいなくたって夫婦仲いいんだから」
「ふふふっ。知ってる」

 紅美と許仲典の仲の良さは、将軍たちの間でも有名だったが、実際は恐妻家として有名になっていた。

「ともかく蒼にいだって、子がほしけりゃ多忙な軍師を妻になんて迎えないわよ」
「そうね。ただ、わたしは、わたしの母もそうだけど親子の縁というものが薄いのかなと思うの」

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