華夏の煌き
星羅の祖母に当たる、胡晶鈴の母も、彼女を産んで早くに亡くなったと、医局長の陸慶明から聞いたことがあった。息子の徳樹も、産んだとはいえ、自分の手元からは大いに離れている。
「また難しいこと考えてるのね。親子の縁って血縁のこと? あなたは西国の方だったけど愛情いっぱいに育ててもらったんでしょう?」
「ええ」
今でも育ての母、朱京湖が懐かしい。胡晶鈴には、存在を知るべく一目でも会いたい気持ちが強かったが、京湖には甘えたくなる。
「子育てしたいなら、うちから一人くらい養子に出すけど?」
「養子に?」
「ええ、愛情があって大事に育つならどこでもいいじゃないの」
「はあ」
相変わらず、考え方にぶれがない紅美は、ある意味尊敬の対象だ。きっと口先だけではなく、本当に望めば、養子の件を承諾するだろう。
「だけど、どうかなあ。蒼にいは自分の子どもなんかはそんなに興味ないと思うわ。あなたと一緒にいるだけで満足そうだし。郭家も跡取りなんて発想ないしね」
代々軍師家系である郭家は、誰か一人に、長男などに跡取りとして期待を寄せることはしない。華夏国の高祖の代から仕えているので、軍師を絶やすことなく子供を多く残そうとするがそれだけだった。子や孫に軍師の才がなく、郭家から軍師が輩出されなければ、それでもう終わりなのだと割り切りがある。蒼樹以外にも郭家には同じ年代の子息子女が大勢いる。もしも郭家に子がなければ、親類である紅美のように子だくさんの者が郭家に養子に出すこともあるだろう。
「歴史がある家柄はやはりすごいのね」
「まあ、二人で軍師なら子育てする余裕ないと思うわよ。むしろ出来たら連れてらっしゃい。育ててあげるから」
「ありがとう。頼もしいね」
「あー、おなか減った!」
ますます貫禄が付いて行く紅美に、星羅は安心感を得る。帰り際、紅美に礼を告げると、彼女は少し照れ臭そうにぶっきら棒な態度をとる。一度、許仲典を他の兵士がからかっているのを聞いたことがある。紅美を知っている兵士たちは、はっきりきついことを言う紅美を怖い嫁だという。許仲典は、そんな評判をものともせず、可愛い嫁だと臆面もなく話すのだ。
「いい夫婦ね」
自分と蒼樹とはまた違う、紅美と許仲典のカップルはとても安心できる愛すべき夫婦だと思い星羅は胸が温かくなった。
117 慶明の死
「また難しいこと考えてるのね。親子の縁って血縁のこと? あなたは西国の方だったけど愛情いっぱいに育ててもらったんでしょう?」
「ええ」
今でも育ての母、朱京湖が懐かしい。胡晶鈴には、存在を知るべく一目でも会いたい気持ちが強かったが、京湖には甘えたくなる。
「子育てしたいなら、うちから一人くらい養子に出すけど?」
「養子に?」
「ええ、愛情があって大事に育つならどこでもいいじゃないの」
「はあ」
相変わらず、考え方にぶれがない紅美は、ある意味尊敬の対象だ。きっと口先だけではなく、本当に望めば、養子の件を承諾するだろう。
「だけど、どうかなあ。蒼にいは自分の子どもなんかはそんなに興味ないと思うわ。あなたと一緒にいるだけで満足そうだし。郭家も跡取りなんて発想ないしね」
代々軍師家系である郭家は、誰か一人に、長男などに跡取りとして期待を寄せることはしない。華夏国の高祖の代から仕えているので、軍師を絶やすことなく子供を多く残そうとするがそれだけだった。子や孫に軍師の才がなく、郭家から軍師が輩出されなければ、それでもう終わりなのだと割り切りがある。蒼樹以外にも郭家には同じ年代の子息子女が大勢いる。もしも郭家に子がなければ、親類である紅美のように子だくさんの者が郭家に養子に出すこともあるだろう。
「歴史がある家柄はやはりすごいのね」
「まあ、二人で軍師なら子育てする余裕ないと思うわよ。むしろ出来たら連れてらっしゃい。育ててあげるから」
「ありがとう。頼もしいね」
「あー、おなか減った!」
ますます貫禄が付いて行く紅美に、星羅は安心感を得る。帰り際、紅美に礼を告げると、彼女は少し照れ臭そうにぶっきら棒な態度をとる。一度、許仲典を他の兵士がからかっているのを聞いたことがある。紅美を知っている兵士たちは、はっきりきついことを言う紅美を怖い嫁だという。許仲典は、そんな評判をものともせず、可愛い嫁だと臆面もなく話すのだ。
「いい夫婦ね」
自分と蒼樹とはまた違う、紅美と許仲典のカップルはとても安心できる愛すべき夫婦だと思い星羅は胸が温かくなった。
117 慶明の死