華夏の煌き
 二人は飽きることなく意見の交換をしあう。話せば話すほど、星羅は自分の思考が洗練されていくと感じていた。


 朱家の集まりの前に屋敷の侍女たちが着替えをもってやってきた。大きな箱を二つ持ってきて「王様からです」と恭しく差し出す。

「あら、着替えならあるのに。気を使ってくれてるのかしら」

 星羅が遠慮すると「こちらは暑いので西国の衣装をお召しになるのが良いかと」とリーダーらしい侍女は告げる。

「着てみたらどうだ。西国の衣装など普段着ることがないだろう」

 蒼樹はこういう差し出されるものには遠慮をする必要がないと、礼を言い受け取った。

「じゃあ、着替えたらもう会食ね」
「そうだな。ではまた後で」

 二人は着替えるために、それぞれ侍女を伴い別室に入っていった。


120 家族の再会
 ホールの床は黒い大理石が敷き詰められており、壁も白い大理石で色々な動植物が彫り刻まれている。いち早く支度が出来た蒼樹は、石造りの建築を見学し、華夏国にも何か生かせないかとよく観察する。奥の入り口から、すっと星羅が入ってきた。

「あっ」

 蒼樹は星羅の可憐な姿に息をのむ。真っ白な光沢のある衣装は、タイトで彼女の身体のラインをはっきり見せる。いつもまとめ上げている髪は降ろされ、加工されたらしく、波打つ髪型にされている。そしてたくさんの白い生花が飾られている。
 星羅は恥ずかしそうに近づいてきた。

「変じゃないかしら?」

 見入っていた蒼樹は咳払いして「なかなかいい」と答える。

「蒼樹もよく似合うのね」

 襟が詰まったカチッとした光沢のあるブルーグレーの衣装は、蒼樹をより硬質でクールな印象を高める。蒼樹の髪も降ろされ、帯状の布が帽子のように巻き付けられている。
 初めて出会うような新鮮な気持ちが湧き、不思議なときめきを感じたが、感想を言い合う前に彰浩と京湖が到着する。

「星羅!」
「かあさま!」 

 豊かな波打つ髪を乱れるのも気にせず、二人は駆け寄って抱き合った。

「かあさま、かあさま」
「まあまあ! いつまでも甘えん坊なのね!」

 星羅の身体を抱きしめ、髪をなでながら京湖も瞳を潤ませていた。しばらく再会を喜び合い、星羅は彰浩にも抱擁する。

「とうさま、元気そう」

 優しく誠実な笑顔はずっと変わらない彰浩に、星羅はほっと癒される思いがする。

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