華夏の煌き
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121 外交 
 華夏国に敵対していた南の小国、覧山国が新王即位すると同時に、友好を結びたいと申し出てきた。覧山国は、国土はさほど広くないが、西国に負けないほどの象軍を持ち、好戦的な民族なので安定した交易はできなかった。

「さて、交渉には蒼樹と星羅に行ってもらおうか」

 大軍師の郭嘉益が2人に指令を出す。軍師は外交官を兼ね、他国との交渉も行っている。星羅と蒼樹の夫婦軍師はバランスが良く交渉にもたけているので外交によく駆り出される。

「二人ともよいな」
「御意」

 星羅は承知したが、蒼樹は押し黙っている。

「どうした」
「いや、覧山国がいきなり友好的な態度ををとってくるのがなぜかと」

 慎重な蒼樹は怪しんでいる。

「そこは間者に調べさせた。新王のムアン王は民族の中でも珍しく温厚な人物らしくてな。世界から孤立すべきではないと考えているようだ」
「ふん。おそらく貧しくなってきているんでしょうな」

 蒼樹の見解は遠からずも当たっていた。戦闘民族で国力を見せつけていたが、華夏国を襲った冷害を覧山国も受けていた。友好国のないこの国は、他国の援助を受けられることなく被害が甚大だった。

「まあ、そういうな。この機会に親睦を深めておけば双方にとって良いだろう」
「わかりました」

 まだすっきり納得をしていない蒼樹だが、渋々承知した。

「蒼樹。太極府で観てもらう?」

 星羅はいつもより輪をかけて慎重な蒼樹の様子に、そう提案する。

「いや、いい」
「そう?」

 すでに太極府でも占われていることだろう。華夏国と覧山国が友好を結べると結果が出ているので外交を押し進めている。覧山国の罠などであれば、そのように出ているはずだ。

 星羅と蒼樹が覧山国に出発する日、兵士の中に亡くなった医局長、陸慶明の息子である薬師の陸貴晶が交っている。

「貴晶さん、一緒に行くの?」

 急遽、同行することになっているようで星羅は驚き尋ねる。

「ええ義姉上。同行いたします。大軍師の郭殿から前日にそう言われまして」
「まあ。なぜかしら」
「どうも郭殿が卜術の占師に占わせたところ、怪我人が出る可能性があるとかで。それで僕が選ばれました」
「蒼樹が渋るから、観てもらったのね」
「父親として心配なされたのでしょう」

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