華夏の煌き
毎日夕方になると、王族の健康診断を行うことになる。慶明はまだ王と王妃を診ることはないが、いずれ田豊成のように王を診ることになるだろう。彼が医局長となった時、王太子の曹隆明が王位についているかもしれない。
10日後の、王太子の診察までに彼の弟妹たちである王子、王女を診察した。それぞれの私室に訪れたが、やはり隆明の部屋は別格に格調高く、人物も兄弟の中で一段と優れていた。
「やはり王となるものは生まれながらに違うのだろう」
晶鈴の子の父親が王太子であればどうにかなるのだろうか。他の王子であれば、晶鈴は頑なに父親を秘密にしただろうか。
「もし、自分が父親だったら……」
誰にも隠すことなく彼女は子の父親を人に告げるだろう。
「ありえないことを考えてしまったな」
自嘲して慶明は晶鈴に思いを馳せる。そろそろ故郷に着くころだろうか。何か困っていることはないだろうか。国家の占い師としての技量は失われてしまったが、十分な金子と能力で生活はしていけるだろうし、故郷もどこかわかっているので何かあればすぐに駆け付けるつもりでいる。
慶明が渡した印章も、町の役所で見せれば彼女にとって便宜が図られるだろう。何よりも晶鈴自身の身分証明書ともいえる通行手形で困ることはないはずだ。特殊すぎる通行手形は使い道もなく、財産でもないので盗まれることはない。
それよりも、王太子を含む王子たちはみな心身ともに健康で、思い悩んでいることはなさそうだった。晶鈴がいなくなっていても寂しくも悲しくもならない者だろうか。子を成すまで晶鈴と逢瀬を重ねていたのは、遊び心だったのだろうか。彼女を弄んでいたなら許せないとと慶明は思い、やはり父親が誰か探し出そうと心に決めていた。
19 空っぽの小屋
無事に王太子妃は出産したが、生まれた子供は女児で世継ぎを産めなかったと呂桃華は落胆し、一層頑なさを増したようだった。曹隆明が心を砕きねぎらっても、彼女は無理に作った笑顔を見せるだけだった。
太極府でも王太子妃から男児が生まれるとの兆しがあったが、女児なのでしばらくは雑然としていた。とはいっても、みな感情的になることはなくすぐに次の未来を占い始めた。
祝いの儀や、臣下たちのあいさつなどが終りやっと曹隆明に一時の休息がやってきた。
「やっと会いに行ける」
10日後の、王太子の診察までに彼の弟妹たちである王子、王女を診察した。それぞれの私室に訪れたが、やはり隆明の部屋は別格に格調高く、人物も兄弟の中で一段と優れていた。
「やはり王となるものは生まれながらに違うのだろう」
晶鈴の子の父親が王太子であればどうにかなるのだろうか。他の王子であれば、晶鈴は頑なに父親を秘密にしただろうか。
「もし、自分が父親だったら……」
誰にも隠すことなく彼女は子の父親を人に告げるだろう。
「ありえないことを考えてしまったな」
自嘲して慶明は晶鈴に思いを馳せる。そろそろ故郷に着くころだろうか。何か困っていることはないだろうか。国家の占い師としての技量は失われてしまったが、十分な金子と能力で生活はしていけるだろうし、故郷もどこかわかっているので何かあればすぐに駆け付けるつもりでいる。
慶明が渡した印章も、町の役所で見せれば彼女にとって便宜が図られるだろう。何よりも晶鈴自身の身分証明書ともいえる通行手形で困ることはないはずだ。特殊すぎる通行手形は使い道もなく、財産でもないので盗まれることはない。
それよりも、王太子を含む王子たちはみな心身ともに健康で、思い悩んでいることはなさそうだった。晶鈴がいなくなっていても寂しくも悲しくもならない者だろうか。子を成すまで晶鈴と逢瀬を重ねていたのは、遊び心だったのだろうか。彼女を弄んでいたなら許せないとと慶明は思い、やはり父親が誰か探し出そうと心に決めていた。
19 空っぽの小屋
無事に王太子妃は出産したが、生まれた子供は女児で世継ぎを産めなかったと呂桃華は落胆し、一層頑なさを増したようだった。曹隆明が心を砕きねぎらっても、彼女は無理に作った笑顔を見せるだけだった。
太極府でも王太子妃から男児が生まれるとの兆しがあったが、女児なのでしばらくは雑然としていた。とはいっても、みな感情的になることはなくすぐに次の未来を占い始めた。
祝いの儀や、臣下たちのあいさつなどが終りやっと曹隆明に一時の休息がやってきた。
「やっと会いに行ける」